幸せにするよ
sideカイン
俺は走って母上たちのもとに向かった。
「母上!父上!フィオナが高熱で倒れていました!」
俺が叫ぶと母上と父上が信じられないというような顔をした。
そりゃそうだ。
高熱の娘をほったらかしにして来客に愛想振りまいている人間がここにいるのだから。
「どこ?今すぐ行くわ」
母上は急ぎの声で言った。
回復魔法のエキスパートらしい。
俺は走ってフィオナの部屋へ向かった。
彼女はベッドで荒い息を吐いていて、その横ではカレンが泣き叫んでいるという異常事態である。
そんなことを気にも留めず母上と妹は彼女を診察し始めた。
「心拍数は異常なし。魔力の乱れもない。疲労や寝不足。ストレスが原因ね。」
診察を終えた母上はこういった。
疲労やストレス。
どれほどひどい扱いを受けているのか...
暫くして彼女は目を覚ました。
「公爵夫妻様!それに公爵令嬢様まで!」
慌てて立ち上がろうとする彼女を俺は肩をつかみ阻止した。
「熱がひいたばかりなんだ。無理はよくない。」
そんな俺に彼女は頬を赤らめ小さく頭を下げた。
「か、カイン様!あ、ありがとうございます...」
そんな時扉が勢いよく開かれた。
「フィオナ!」
侯爵夫人だ。
「なんてことをぉ!カレンの邪魔しないでちょうだい!あんたは存在すら邪魔なのに!どれだけカレンの邪魔をすれば気が済むのよ!」
現れた母親の姿を見てフィオナは涙をこぼした。
存在が邪魔。俺が母上に言われたらどれほど悲しい言葉だろう。
初めて見た母のこんな姿にカレンは涙を引っ込め動揺していた。
「お母様?なんでそんなこと言うの?お姉ちゃんは性格もいいし、私より何百倍もきれいだよ?それにお母さまにだって優しくしてくれるじゃん?
そんなお姉ちゃんのことお母様は邪魔なの?」
カレンの正直な言葉と事実に侯爵夫人は真っ青になった。
「カレン?こんな子のことわすれましょう?カレンはカイン様との婚約だけを考えていればいいのよ?」
この場に及んでまだこんなことを...
俺や母上だけでなく妹さえもため息をつく始末。
仕方ない。この場で夫人にわからせてやるほかない。
俺は母上に目配せして微笑んだ。
『今ですよね?』
俺は涙を流すフィオナの手を取りこう告げた。
「俺と婚約してください。」と。
sideフィオナ
「え。」
え?
目の前には私の手を取り微笑む美少年が_
それはカレンの婚約者になるはずの人で...?
そうかわかったぞ!熱の延長だなぁ!
「カイン様。申し訳ありません。今、あなたに婚約してほしいといわれる妄想をしてしまいました。どうか許してください。」
素直に目の前の美少年に謝罪するとくすくす微笑まれた。
「事実なんだけどな...」
えぇぇぇぇぇぇ?
現実?
受けたい話だけど...
お母さまが受けるんじゃなんぞ。と目で訴えている。
恐怖で顔から血の気が引いていく。
「選ぶのは君だ。親の目は気にしちゃダメ。」
この声。カイン様だ。
私の正直な気持ち...
「私、この婚約。お受けしたいです!」
私がはっきり告げるとカイン様は満足そうに微笑んだ。
「じゃあ、行こう!」
え?どこへ?
私がキョトンとしていると_
「公爵家だよ。今家にいたら何されるかわかんないからね」
いたずらっぽい笑顔でカイン様は微笑んだ。
*************
_数年後_
私は私に似た容姿を持つ赤ちゃんを抱いていた。
「クリス?あなたは幸せになるのよ?私みたいにね」
私の体面に座っているのは現役公爵のカイン。
「フィオナにそっくりだね。幸せな未来を必ず守ろうね。フィオナ」
「えぇ。カイン」
*現代
聞けば聞くほど大恋愛...
「お父様!私もそんな恋したいです!」