婚約者
入ってきたのは艶やかな黒髪に水色の澄んだ瞳をした美少年だった。
きりりとした目元がかっこよくて私は思わず頬を染めてしまった。
40歳とか50歳年上じゃなくてよかったぁ。
と次に安心感が襲ってした。
そんな私をお母様が強くどついた。
「いたっ。」
小さく吐いたのを婚約者様は気づいたようでお母様に鋭い視線を向けた。
それに気づかないお母様は立ち優雅なカーテシーを披露した。
「初めまして。わたくしはこの子の母、クリリアナ・シュリーですわぁ!この度は婚約を受け入れてくれてありがとうございますぅ!」
私もあわてて起立しお母様ほどとは言えないが生れてから鍛えられてきたカーテシーを披露した。
「は、初めまして...フィオナ・シュリーです。えっと、き、緊張しています...」
まったく完ぺきとは言いがたい程のものだった。
が公爵夫妻は「初々しいわぁ~!」と受け入れてくれた。
こんな家庭に嫁げるのかぁ。と思うと嬉しい。
今日はもう帰るということになり、お母様は行きと同じように私を馬車に押し込んだ。
「あんたにはもったいないわね。カレンを嫁がせましょう」
そうしてお母様が口にしたのはとんでもないことだった。
カレンとは私の異母姉妹。
今のお母様は実は私のお母様ではない。
お母様は病弱だったらしく私とお姉さま二人を生んですぐ亡くなった。
そしてお父さまは最愛のお母様をなくしたことで浮名ばかりを流すようになった。
そして最後お父さまが再婚を決めたのがこのお母様なのである。
私のことを少々邪魔に思っていて、いよく追い払おうと婚約を結んだんだろうがあまりの美少年さに自分の本当の娘カレンを嫁がせようと決めたのだろう。
カレンは美しいが正直のところお父様には全く似ていない。
お母様にのはちみつ色の髪にピンクブロンドのひとみ。
愛嬌があって屋敷のムードメーカ。
前妻であるお母様にの私よりカレンをいいところに嫁がせたいのだろう。
見え見えである。
「文句はないでしょうね?」
お母様は私を責めるように聞いてくる。
こういう時逆らうと体罰を受ける。
なら従っておいた方がいい。
私の淡い初恋はこの瞬間あっという間に崩れ落ちた...。
*
その後カレンが公爵家に入り浸っていると侍女のミーシャに聞いた。
あれだけのルックスを持つんだ。カレンが好きにならないはずがない。
それに我が家の太陽エレンをあっちも好きにならないはずがない。
そう思うと少しちくりとした。
「お姉ちゃん!」
ちょうどカレンが私の部屋に突入してきた。
いつものことだ。
カレンは公爵家に行ったあと私に話をしに来る。
「あのね、あのね!カインね!私のクッキー美味しそうに食べてくれたの!」
「良かったね!カレンは可愛いからカイン様も好きになってくれるよ!それかもう好きかもしれないしね?」
「おねーちゃん!ありがとう!またね!」
そう言いスキップでカレンは部屋を後にした。
ツゥーと私の頬を涙が伝った。
カレンからカイン様のことを聞くとどんどん好きになってしまう。
もうカレンの婚約者なのに...。
私って駄目な子_結ばれるはずないのに...
私はそして眠りについた。
この時からだが熱で暖かかったのはきっと勘違いだろう...
sideカイン『クリスティーナの父さん』
俺は初めて恋をした。
侯爵家の令嬢にだ。
母親に強くどつかれながらも完ぺきなカーテシーを披露した彼女は俺の中で輝いて見えた。
が、この恋を自覚した後日侯爵家から婚約者変更の願いが届いた。
彼女の妹のカレンと婚約者を変更にしてください。とのことらしい。
母親も父親も。もちろん俺も強く反対したが合わないことは無礼なので一度だけあってみることにした。
そして三日と日を開けず現れたのは侯爵夫人とカレンだった。
カレンの容姿は彼女と違い蜂蜜色の髪にピンクの瞳という夫人そっくりの容姿をしていた。
正式な挨拶をする前に「このかたがぁ。私の婚約者ですのぉ~?!かっこいいですわぁ!」と俺の腕に巻き付いてきた。
カレンは近づくととてつもなく甘い香りがして父上も母上も顔をゆがめた。
が、あちらはそんなことお構いなしに「そうよぉ~!カレンにこそ似合うお方なのよぉ!」と騒いでる。
彼女たちが屋敷を後にした後、緊急作戦会議が行われた。
「私はあんな方嫌いよ。旦那様」
「わかっている。婚約はお断りかな...私もあんな夫人とやっていける気がしないんだよ。」
「それがいいですわ!お父様!お母様!お兄様をあんな意地が汚い悪女にあげられませんわ!」
うん。さすが俺の家族。口の悪さは世界一かもしれない。
「で、お前の意思はどうなんだ。カイン」
突然話を振られ俺は硬直した。
「俺は、群青色の彼女_フィオナ・シュリーと婚約したいです。
あの、カレン・シュリーとは婚約したくありません!」
聞かれ俺は自信を持って思っていることを口にした。
俺はフィオナと婚約したい。
そう聞いた両親といもうてゃ満足そうに微笑んだ。
「よぉ~し!明日、侯爵家に乗り込むわよぉぉぉぉ~!」
「準備は進めてくぞ」
「お兄様、お母様、わたくしも行きますわ!」
『待っていろ侯爵家。必ずフィオナを手に入れる』
俺はそう誓った。