イメチェン
それは侍女全員に広がっていき明るい雰囲気に包まれた。
「な、なぜ笑うんですか?!」
私が聞くと最初に笑い出した侍女が口を開いた。
「だ、だってお嬢様は冷酷我儘女王として知られていたのにこんなことを言い始めるなんて誰も予想しませんよ?」と。
私はかぁぁぁぁと顔が赤くなるのを感じた。
思っていたことだけど面と向かって冷酷我儘女王といわれると恥ずかしい...
「ふふふ。でもお嬢様。可愛かったですよ!」
「っ_____________」
真っ赤になり座り込む私を慌ててマーサが支える。
「お嬢様!おきをたしかに~!」
笑いが広がり再び暖かい空気に包まれたとき誰かが誰か部屋に侵入してきた。
「遅すぎるぞ。」
目をうつろにしたお父様であったのは予想できたことである。
「ドレスなども早く決めてくれ。今日はフィオナに会いに行く特別な日なのだぞ?」
侍女に向けられたもので私はちょっと安心した。
お父さまを怒らせたらひとたまりもない。
お父さまが目をうつろにさせ退室していったところで私は侍女に注意された。
「お嬢様!お着替えという本題を忘れるとこでしたよ?!」
事実過ぎて言い返すことができず私はひたすらうつむいた。
それよりも私は侍女のいいかたが砕けたような気がしてうれしかった。
「何色にいたしましょうか?」
こんな時いっきにモードを変えられるのはさすがプロ。と思ってしまう。
「えっと。水色とか白。ピンクとかのパステルカラーで」
「はい。かしこまりました!」
私は椅子に座り自分の顔をまじまじ見ていた。
緩やかに波打つ群青色の髪に輝く水色の瞳。
お母様譲りらしい髪色とお父様譲りの瞳。
顔立ちは美しいと評判だった母似らしい。
きりりとした目元は父似。
綺麗なのかな...見れば見るほどわからなくなる。
「お嬢様ぁ~!準備できましたよぉ!」
「うん。ありがとうマーサ!」
マーサの声が耳に届き私は椅子から飛び降りた。
すると、目の前にはドレスの山!山!山!
私が指定した通り全てがパステルカラー。
こんなにあるなら十分の一残して九割処分しようかなぁ。
「さぁ!どうなさいますかぁ?」
侍女長というカレンがおすすめのドレスを私に合わせてくる。
その中でひときわ輝く服を私は見つけた。
水色のワンピース。
貧相な服だけど腰に青色のリボンがついてて可愛い。
「こ、これ。これにします!」
私はそのワンピースを指さしながら言った。
すると侍女たちはまぁ。と息をついた。
「フィオナ様が幼少期来てらっしゃった服ですね。」
お母様が。
確か群青色の髪と瞳を持つお母様にはとてもお似合いになる服だ。
「じゃあ、髪は三つ編みにしましょう!」
私は侍女たちに一瞬のようにして服を脱がされワンパースを身にまとう。
初めて着てみたこのワンピース。なのにどこか懐かしい香りがした。
そのあと髪の毛を三つ編みに編まれて部屋の外に放り出された。
すると、外にいたお父様の目が見開かれた。
「フィオナ...」
そしてお母様の名前を口からこぼした。
「お、お父さま?似合っていますでしょうか...」
私が不安そうに聞くと
「当たり前だ!フィオナと似てとても美しいぞ!」
とほほ笑まれた。
その姿に私も笑顔がこぼれた。
「さて行くか!」
そしてお父さまは私を抱き上げて手の中におさめてしまった。
これがこの子のクリスティーナ・ローズティアの日常なのね。
朝食は馬車の中でとるらしく侍女にバスケットを手渡しされた。
中をのぞくとサンドイッチ的なモノが入っていた。
私とお父様は馬車に乗り込んだ。
何を話そう。と考えていると一つの疑問が浮かんだ。
『フィオナさん、お母様のこと』
私は気になったので聞いてみることにした。
「お父様。お母様のことを教えてください」と。
その言葉にお父様はきょとんとしたけれど一度目を伏せ「いいよぉ。」とほほ笑んでくれた。
「お母様はね?_
*フィオナちゃん。お母さんの目線で行きます!
sideフィオナ
私には幼いころから決めた婚約者がいる。
あったこともないし、名前すら聞いたことがない。
私の親は自分の家の繁栄なら娘だって問答無用で差し出す。
私のお姉さま二人も40歳年上くらいのおじさんの遊び相手になるために差し出された。
私も40歳以上の方に差し出されるに違いない。もしくは50歳以上かもしれない。
今日その方のお屋敷に行くと聞いた。
その成果お父様もお母様も機嫌がいい。
「絶対気に入られるのよ?」「我が家の繁栄のためなんだ!」
今日はそれを言ってバッカ。
本当は結婚したくない。そうやって言ったら軽蔑されてしまうような気がして言えないけれど。
「さぁ。行くわよ。」
お母様が私の手を強引につかんで馬車にいれる。
『いい人だといいな』
私はそう願った。
*
公爵邸は想像以上に大きくて今いるお部屋なんて私の家の玄関ぐらいある。
それほど力を持った貴族らしい。
私とお母様が座るソファに対面して座っているのは公爵と夫人みたい。
「ごめんなさいねぇ。息子、この婚約に乗り気ではなくてぇ。アンの愚息...」
「すまないね。侯爵夫人。令嬢さん」
二人に頭を下げられるのはお母様にしては嬉しいことみたいで笑みをかみ殺しているのがわかる。
「父上。母上。まいりました」
そんな時綺麗ラノボイスが響いた