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私は...

「ちょっと何してんのよ。遅い。クビにするわよ?」

私はメイドに怒鳴り散らしている。


私の一言でメイドの顔はサァと青くなっていく。

そして体を折り曲げ私に頭を下げてくる。

「も、申し訳ございません!私の家は没落していて借金まみれなのです!

ここで切られたら私の家は!

どうかお許しください!」


「私の命令が絶対なのよ?口答えするのね。ならなおさらあなたなんて必要ないわ。

荷物をまとめて今日中には屋敷から出ていきなさい。」

私はそう言い放ち自室に向かって歩きだした。


「ついてらっしゃい。マーサ」

「はい。お嬢様。」


後ろでは先ほどクビにしたメイドがわんわん声を上げて泣き叫んでいる。


そんなの私にとって知ったこっちゃない。


ワザと音が鳴るように扉を開ける。

「閉めてちょうだい、マーサ」


「はい。お嬢様。」


ソファに座り午後の予定を確認する。

1時からマナーのレッスン。

2時からお勉強。

3時から_

ここまで読み私は声にならない悲鳴を上げた。


『3時から王城に付き添い。』

お父さまはこの国の宰相という重役を担っていて、王城によく出かけている。

お仕事に私もたまに連れて行ってもらえることがある。が、私の胸の高鳴る理由はまた別にある。

王城には第2王子殿下がいらっしゃるから。

会うこと自体は初めてではないが挨拶を交わすほどでしかなかった。


「マーサ。メイドたちを数十人連れてきなさい。ドレスと髪飾りもたくさん用意してちょうだいね」

ウキウキする声を押さえ低い声でマーサに命令する。

「はい。髪飾りなどは何色がよろしいでしょうか。」

「私の群青色の髪に会うような色にしてちょうだい。なるべくつつましくおしとやかに見えるようにしてちょうだいね」

「はい、かしこまりました。、」


マーサが静かに扉を開けて退室していった。

それと入れ違いに、お父さまが私の部屋に入ってきた。

「あぁ!私の愛しい娘!倍・フィオナに似て来たね!」

入って来て早々私に抱きつくのはどうなのか。

フィオナというのは私のお母様で5つの時に病気で他界したらしい。

この群青色の波打つ髪は母譲りだと父が語っていたのはいつの頃だろう。

「準備は初めているかな?殿下にお会いするのだから服装は整えていくんだぞ?」

「えぇ。承知しておりますわぁ!お父さま!殿下をメロメロにして見せますの!」

言い切る私に父は目を悲しそうに伏せた。

お母様は優雅で美しく凛とした女性だったらしい。

容姿は似ていても性格は別人。と心の中で吐いているに違いない。

そう思うとイラつきが込み上げてきて「失礼いたします。」と入ってきたマーサに怒鳴り散らした。

「遅いわよ。あなたもクビにされたのね」

そんな私の見ているのがつらくなったのかお父様は席を立ちフラフラと扉から出ていった。

「マーサ。遅かったじゃない。私を待たせるなんて何様のつもりなのよ。」

「申し訳ありません...ドレスの色などを確認しておりましたら遅く_」

「言い訳なんて聞きたかないわ!

もういい。出て言ってちょうだい。」


私はマーサにいけてあった薔薇を一本投げた。

「ハイ...」

深く礼をし泣きながらマーサは退室していった。

そんな光景を見ながら私はうれしいと思った。

時間というものは早く過ぎ、あっという間に3時に時計の針があった。

私は鏡の前でクルリと一周回った。

それに反応するように深紅のドレスがふわりと揺れた。

金色の糸で刺繍してある深紅のドレスは自分が一番だと示しているようで気持ちがよかった。

白色の襟は裾にフリルがついていて私を少しでも純粋な女の子にしてくれるような気がした。


「もう行こうか」

扉の向こうでお父さまの優しい声がして「はい。」と扉を開けた。

私のドレス姿を見てお父様は満足そうに微笑んだ。

このドレスはお父様が作った特注品でとても高価なもの。

「似合っておりますかぁ?お父さまぁ!」

私は甘みを含んだ声でお父さまの腕に巻き付いた。

そんな私にお父様の優しい水色の瞳が向けられた。

私の家の家紋のついた大きな馬車に乗り込みお父様の方にもたれかかる。

『今日いいことがありそうね』

という期待に胸を膨らませて...


「起きなさい?」

私はお父様の優しい声で目を覚ました。

すると目の前には美しい容姿でほほ笑むこの国の国母と小さな王子がいた。

今私と同じく12歳の第3王子。

私はその二人の美貌にハッとし甘い声を出す。

「初めましてですかぁ~?わたくしはぁ~クリスティーナ・ローズティアですわぁ!

王子様と国母様にお会いできて大変うれしゅうございますぅ!

殿下様ぁ!なかよくしていただけるとうれしいですわぁ!」

私の出した声に殿下はフフフと笑い王妃様に図書室に戻りますと言って席を立った。

そんな!私はあわてて席を立ち殿下のもとにかけだすが足がもつれて小さな石につまずいた。

「ローズティア様!」

殿下が慌てて支えてくださるがもう間に合わない。

私は地面に倒れこんだ。

その時私の頭に走馬灯のようなものが一気にあふれだした。



















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