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片霧紫艶の名前が教会に所属している全魔術師に通達され、包囲網が敷かれてからは発見されるまでそう時間はかからなかった。
正確には発見というより目撃証言だ。
これまで消息不明だったのが嘘のように報告が上がってきた。
ある時は妙齢の女性の姿で、ある時は年老いた男性の姿で、またある時は性別不明の幼子だったりと正に姿形を変えて出没していたのだ。
遭遇した魔術師達は一様にそんな悪さをする様な者ではなかった、魔術への探究心が素晴らしくこちらの研究が進んで感謝したいくらいだと口を揃えて言っていたそうだ。
なんだその犯罪を侵した関係者に対するインタビューみたいなありきたりなコメントは。
もう少し警戒心を持って関わるべきじゃないのか。
それはさておき、報告された姿の数だけ被害者がいることは紛れもない事実。
被害者からとあちこちを放浪して習得したであろう魔術も膨大な数になる。
桜を狙っていた事もそうだが、『鬼』の作成の件もある。
一体何を目的に行動しているのかは謎のまま。
正直不気味でしかない。
「……訳が分からん」
「そうね、私もよ」
「およ?皐月さん来てたんだ?」
「玄関の鍵、開けっ放しだったわよ。いくら強いって言っても不用心すぎるんじゃないかしら」
「そいつは失敬」
「まあいいわ。それで考えていたのは片霧の事よね?」
「今のところ自分に対しての直接的な被害は無いにしても身内に被害はあったから。消息は掴めても本人に辿り着かないし、これまでの事を考えると何を考えているのやらと」
「そういえばなんだけど」
「ん?」
「先代と神無月さんには話したのかしら?」
「あ」
やっべ。被害者本人呼べるやないかーい。
感動の別れみたいな事になってすっかり忘れていた。
魔力量は……皐月さんの分もあれば足りるな。
よし、やろう。今すぐ呼ぼうそうしよう。
「忘れてたわね」
「はい、忘れてました。それより魔力貸してもらえます?」
「そのつもりで来たのよ」
「ではお手を拝借」
この間は初回ということもあって失敗しないよう大層な感じになってしまっていたが、コツを掴んだ二度目ならばもっと簡潔に出来るので早速来ていただきましょう。
「よっこらせ」
リビングのドアを『冥府の門』に見立てる事で簡易化、そこだけが黒い扉へと変化する。
ギギギと鈍い音を響かせて開かれた扉からは……誰も出てこない。
「あれ?手応えあるんだけど何故に?」
「知らないわよ。簡単にしすぎたのが悪かったんじゃない?」
「おーい、お二人ともー?出てきて下さいよー?」
しばらくの沈黙の後、何ともバツの悪そうな声が扉の奥から聞こえてきた。
「……呼ばれるの早くないか?」
「そうだぞ祐介。結構感動的な別れになっていたのだからもう少し情緒と言うものをだな……」
「いやいやそんな事より色々聞きたいことが出来たんで」
「そ、そうか……」
「そんな事……私の孫酷くないか……?」
「はい、情報共有しまーす」
「「雑だな!?」」
結構一大事なんですよ現世は。




