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「やり過ぎってレベルじゃないぞコレ……」
オーバーキルと言っても過言ではない一撃にドン引きした。
人に向ける魔術の範疇を超えている。
皐月の隣にいる如月も口をあんぐり開けて固まっているではないか。
「また火力上がっとるやん」
「あーもー無理、師匠硬すぎ」
しかしそれでも平然と立っているのが七神家当主。
着物の端が焦げてはいるがピンピンしている。
「母さん、もしかしてだけどいつもこの規模の魔術を食らってるのか?」
リングの外から疑問をぶつけるとケラケラと笑いながら答えてくれた。
「当たり前やん。修練で使えん魔術は実戦じゃ無意味やからな。あと三割火力が上がったらうちに届くやろうな。ほれ、聖子ちゃんも奥の手出しとき。かすり傷付けてくれるんやろ?」
「無理ですぅぅぅぅぅ!!!」
「無理言うてたら一生無理や!」
「いやああああぁぁぁぁぁ!!!」
「嫌ちゃうわい!」
「生意気言ってごめんなさいいいいいいい!!!」
「ごめんで済んだら警察いらんわ!」
押し問答が始まり、しまいには朱色の槍にしがみついて座り込んだ如月と何とか立たせようとする鈴花という奇妙な構図が生まれた。
何だこの母親と愚図る子供のやり取りは。
「ええい、ほなその槍貸してみ!そしたらやらんでええから!それでどうや!」
「はい貸しますそれで勘弁して下さい」
本日二度目の如月による土下座である。
「祐介!ちょっとこっちきい!」
「え、嫌です」
何故かこちらに飛び火したので拒否するが抵抗虚しくリングに連れて上げられた。
「何をさせようって言うんだよ……」
「それ使えるやろ?使えんとは言わさへんで?」
気軽に如月から取り上げた槍を投げ渡してくる鈴花。
こうなってはどうしようもないので仕方なく構え、朱色の槍から使い方を読み取る。
流れ込んで来たのはこれを作った魔術師の意思と如月の努力の面影。
惜しいと思った。
「はー……これまたこの作者はニッチな物を作ったんだな。ところで如月さん、この槍の使い方は分かってませんでしたね?」
急に話を振られて戸惑う如月。
「えっ?ただの呪力が込められた槍じゃ……」
「癒えない傷を与える、それはこの槍の本質ではありますが、ただ突いたり切り結ぶだけじゃないんです。見てて下さい、これが正しい使い方です」
リング端まで移動し、助走をつけて投槍の要領で放つ。
「『ゲイ・ボルグレプリカ』」
放たれた槍は枝分かれを繰り返して満開の花を咲かせるが如く穂先を増殖させる。
降り注ぐ文字通りの槍の雨は鈴花へと襲いかかった。
「洒落臭いわ!」
獰猛な獣の様に笑う鈴花はそれを己が拳を以て迎撃する。
稲妻を身に纏い、超高速で叩き落としていく。
「これが本来の使い方……」
「なかなか物騒な物を持っていたのね。それにしても師匠があそこまではっちゃけてるのは初めて見たわ。やっぱり私の夫は祐君しかいないわね」
「……惚気ですか?」
「えぇ、いい男でしょ?」
聞こえてますよー!
何か恥ずかしいので止めてもらえます!?




