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皐月との一線を越えてしまってから五日が経過した。
過度なスキンシップが増えて大変な日々を過ごしながら魔術教会からの情報を待っている状況だ。
勿論こちらでも独自に捜索はしている。
忘れ去られているかもしれないが探偵業が本業の睦月にも協力してもらっているものの手掛かりは未だに掴めていない。
今まで探していた神無月が既に死んでいた事が発覚してこれまでの調査が無駄になったと文句を言っていたがお金の話をチラつかせて黙らせておいた。
何とも現金な奴である。
「ところで姉貴と寝たってマジか?」
「……不可抗力だったんだよ」
「おめでとうと言うべきかご愁傷様と言うべきか」
「何も言わないでおいてくれ……後悔はしてないけど底なし過ぎてそろそろ身体がもたないんだ……」
「それは別に聞きたくなかったな。まあ男に縁の無かった反動なのかもな。しっかり可愛がってもらえ」
「……代わるか?」
「冗談は寝て言え馬鹿野郎」
そんな軽口を叩いていた昼下がり、睦月の事務所で喋っているところでドアがノックされた。
どうやら来客のようだ。
「どうぞ、開いてますよ」
招かれ入って来たのは銀髪を大きな三つ編みにした女性。
背中に背の丈を超える大きな荷物を背負っており、荷物から薄らと魔力が漏れている。
もう怪しさ満点だ。
「ここが蒼崎探偵社で間違いないか?」
「そうですが貴女は?」
「魔術教会執行部、如月聖子と言う。ここに蒼崎皐月の弟がいると聞いて伺った」
これまた物騒な来客が来たものだ。
「はあ、まあ自分がそうですが何用です?執行部に睨まれる事は何もしてないですが」
「単純な話だ。蒼崎皐月をここに呼べ。さもなくばこの事務所ごと消し去ってやる」
「……残念ですが姉とはあまり連絡を取り合っていないので何処にいるかは分かりかねます。それに急に押し掛けて脅しとは執行部には常識というものが無いですか?後で教会には七神の名前で抗議しておきますのでお引取りを」
面倒事だと察知してすぐに嘘をつき、ついでに毒も吐いておく睦月。
さっさと帰って欲しい人種だなこれ。
「むっ……それは勘弁願いたい」
「何故です?」
「どうしても蒼崎皐月に会わなければならんのだ」
「それは執行部の意向じゃないですね?」
「ぎくっ」
カマをかけたらボロが出た。
口に出したら駄目な擬音だろそれ。正直者か。
「もしかして貴女、独断で動いてます?」
「……それがどうした」
「祐介、鈴花さんに連絡しといてくれ。執行部が事務所に来て脅しをかけてきたって」
母の名前を聞いた途端、如月と名乗った女性はプルプルと震え出した。
よく見れば泣きそうになっているでは……あ、泣いた。
「……ぐすっ……私は……蒼崎皐月に……ぐすっ……会いたいだけなのに……報告されたらまた上司に怒られちゃう……」
「あーあ、泣かしちゃった」
「え!?悪いの俺なの!?大人の対応をしただけなのに!?」
「はいはい、大きな声出さない。えっと如月さんだっけ?皐月さんに何の用なんです?」
「修行の成果を……ずずっ……見てもらおうと……ぐすっ……でも連絡先知らなくて……弟さんなら連絡してもらえるかなって」
最初の堂々した雰囲気は微塵も残っておらず、弱々しさだけが残っていた。
何なんだこの残念な人は。




