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水月の調整に始まり、皐月の結婚宣言と真剣勝負に終わった濃密な二日間は大変な爪痕を残し、その後の生活は激変した。
何せ源次郎の魔術具が完成を迎えるまでの残り五日間は毎日が逃走の日々であった。
誰からかと言えば何となく察してもらえると思うが、姉の飛鳥は勿論のこと、音羽、それに皐月までもが仲間に加わっていた。
前述した二人は皐月の提案を実行に移し、内縁の妻となるべくこちらを追い、皐月に至っては再度の挑戦を巡って三人協力してこちらの捕縛を試みていた。
後で聞いた話では負けっぱなしは気が済まず、結婚するなら尻に敷いておかないと私が私じゃないとの事。
煙に巻いたが結婚する気は消えていなかったようだ。
無意味な争いをするつもりはないのでお陰でマンションに帰るに帰れずあちこちのホテルや睦月の元を訪れる羽目になった。
その間、護衛対象の桜はと言えば実家で過ごしてもらっていた。
『誘鬼灯』の体質を隠しているとはいえ、何が起こるか分からないので母の鈴花と一緒にいてもらうのが正解だろうと思ったからだ。
飛鳥がこんな調子なのでアルバイトも実家の都合という事で休みを取っている。
退屈しているだろうと逃走ついでに一度実家に様子を見に行ったがそうでもなかった。
ましろやコマ、それ以外にも七神家に住み着いている妖怪、霊獣、その他諸々のケモノ達を取っかえ引っ変え愛でていた。
「ここが天国や〜」
「人が必死こいて逃げてるのに何してんですか桜さん」
「ひゃわっ!?ち、違うのよ祐介君!する事ないから皆のお世話をしていただけなのよ!そ、そう!鈴花さんから任された仕事なのよ!だからそんな呆れた目でお姉さんを見ないで!」
「まあましろ達が嫌がってはいないみたいですからいいですけど。ところであの三人は来ました?」
「来てたけど祐介君がいないのを確認したらすぐどっか行っちゃったよ。ホントモテる男は大変ね」
「ええ大変です……桜さんも向こう側だったらと思うと背筋が凍りついてしまうところですよ」
「あはは。祐介君には感謝はあっても恋愛感情はないから安心してね。周りの障害が大きすぎてどうも出来ないし」
「知らぬ間に振られた気がしますけどまあいいです。何だかんだ結構長く同居しましたけど迷惑は……色々かけたと思いますがどうでした?」
「そうだねえ……胸の内にあったモヤモヤがスッキリしたのかな?今までどうしようもなかった事が解決したっていうのがまず大きいし、夜になっても必ず誰かが一緒にいるって凄く恵まれているんだなと思ったよ」
はにかみながらこちらに感謝をしてくれる桜。
聞いておいて何だか恥ずかしくなった。
「なら良かったです。さっさと他も解決して自由になるよう頑張りますよ」
「うん、期待してるね」
信頼を置いてくれるこの人の為にも頑張らねば。
2章はこれにておしまいです
次の章は一週間以内に投稿出来たらと思っております
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