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退魔の魔術師  作者: 霜野睦月
第2章 邂逅
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今日はひな祭りなので本編続きの皐月と飛鳥の回です


ひな祭り要素は皆無ですが気にしない方向で


一応皐月視点で書いています

夜の街を駆ける。

追いかける事はあっても追いかけられる事は指折り数えられる程度なので貴重な経験だ。


相手はと言えば祐君の姉の飛鳥ちゃん。

ちょっと刺激が強かったみたいで、おおよそ人が出せる速度を超えてこちらを追ってくる。

負けじとこちらも一般人なら有り得ない速度を出す。


理性が残っているかと言われれば多分ないだろう。

重度のブラコンだとは思っていたがここまでとは正直なところ思っていなかった。

『水姫』の力を借りて追っかけてくるかな普通。

毎日大変だったのだろうと祐君に同情する。


「この辺で人気がなくて広い場所は……学校の校庭くらいか。一応人払いの結界は張っておいて、校舎に被害の出ないようにもしとかないと……駄目そうよね、あの感じじゃ」


チラリと後ろを伺ってみると正に鬼の形相がしっくりくる飛鳥が徐々に距離を詰めてきている。

その脚力で踏みしめたアスファルトが少し凹み、おまけに魔術で発動した水球を浮かべて迎撃体勢になっている。


「完全にこっちをヤル気ね飛鳥ちゃん……まあ人質いるし何とかなるかな?ほら、音羽ちゃん、気絶してないで起きなさいよ」


「……はっ!?……これはどういう状況なので?」


「後ろ見てみたら分かるわ」


脇に抱えていた音羽ちゃんを走りながら器用に肩に担ぎ直して状況を確認してもらう。


「…………きゅう」


「こらこらまた気絶しないの!」


肉付きの良い尻を空いている手で叩き覚醒させる。

なかなかにいい感触。後で撫でよう。


「……私は空気……私は空気……私は空気」


「現実逃避しないの。事が終わったら解放してあげるからそれまでは人質として役に立って」


「……飛鳥姉様ガチギレ……私にどうしろと言うんです?」


「刑事ドラマみたいに呼び掛けるとか?」


「……飛鳥姉様たすけてー」


音羽ちゃんの棒読みの言葉に反応して水球の一つが弾丸の勢いで足を狙ってくる。

足止めのつもりなのだろうが身体強化を発動している私にはそんなもの子供の水鉄砲と変わりないのでズボンが少し濡れただけに終わった。


「……撃ってきた」


「無差別に撃ってこないだけマシかしら」


「……結構な威力だったのにビクともしない……私が担がれている意味ってあります?」


「後で楽しむ用ね」


「いやー!飛鳥姉様助けてー!食べられるー!」


「ほらほら暴れないの!もう到着したからじっとしといて。それじゃサクッと結界張って、鬼退治と洒落こみましょうか」


担いでいた音羽ちゃんを校庭に下ろして準備を行う。

準備自体は一瞬なので追いついた飛鳥ちゃんとすぐに対峙する事になった。


先手は向こう側。

先程の狙撃が効かなかったのを見て威力が出るようピンポン玉くらいの大きさだった水球がバスケットボール大のものへと膨れ上がる。

込められた魔力の密度から水球は鉄の砲弾に相当かそれ以上の威力になるだろうと思われるが、避けるのは私的に面白くない。

真っ向勝負をしてこその蒼崎皐月わたしだ。


「この程度なら祐君は貰っていくわね」


襲来する弾幕を全て己の拳で迎撃し派手な水飛沫を上げて地面を濡らしていく。

それに伴って服が肌に張り付いてくるが気にしない。


「祐君は……渡さない!!!」


こちらにかざした手を握ると同時に突如濡れた服が身体を締め付けてきた。

ボディラインがくっきりと現れてしまうがこの場にいるのは飛鳥ちゃんと音羽ちゃんなので別に気にしない。

祐君ならチラチラと見てくるだろうな。


「なるほど、魔力を含んだ水を利用しているのね。流石は水が名前につく『鬼』だけあるわ。でもね、私には物足りないかな」


己の魔力を周囲に放ち、空間全てを自分のものにする。

それだけで締め付けはなくなった。


「嘘……」


「嘘じゃないのよこれが」


呆然と立ち竦む飛鳥ちゃんへ距離を詰め、後ろに回り込み首に手刀を入れる。

気絶して倒れ込むところをお姫様抱っこで支えて、水浸しの地面で濡れないようにする。


男なら容赦なく殴り飛ばしているけど可愛い女の子なら乱暴な事は出来ないもの。


「起きたら色々話し合わなきゃね」


祐君を巡る争いは私の完勝で終わった。

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