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退魔の魔術師  作者: 霜野睦月
第2章 邂逅
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『創器』が完了してからは鈴花の部屋から武道場に場所を移し皐月による殴る蹴るの暴行が小一時間続いた。

しまいには鈴花も参加していた。

水月は喜び勇み咽び泣いていた。

頭が痛くなる光景だった。


「これです!この痛みこそ至高の極み!」


「もう帰っていいかな」


「あっはい大丈夫です、ありがとうございました」


「敬意の欠片もねえなオイ」


感謝の仕方が雑になった。もうやだこの駄鬼。


「次は飛鳥様もお呼び下さいね」


「死ね」


ホント死ねばいいのにと思いながら実家を後にしたのだが、マンションには更なる苦難が待ち受けていた。


「何があったか説明してもらえるかな?」


ドアを開けた先に飛鳥が待ち伏せていた。仁王立ちで。


「……水月に『創器』を使ってきただけだけど」


「違う。皐月さんに言い寄られて鼻の下伸ばしてた」


「何故それを」


冷や汗が止まらなくなった。

あの場にいなかった筈の飛鳥が何故知っている。


「私の情報網を舐めないで。祐君の行動は一部始終全てまるっとお見通し。八雲神社に行っていた事も源次郎おじさんの所に行っていた事も知ってる」


「何この姉怖い」


「で、祐君はどう答えたのかお姉ちゃんに教えてくれるかな?それとも教えられないのかな?」


「からかわれて終わりでしたはいそれだけです」


「ふーん……ちょっと皐月さんとはお話し合いが必要そうかな。何を勝手に私の祐君に手を出そうとしているのかきっちりみっちり聞かないと」


底冷えした声で淡々と話す飛鳥に恐怖を感じざるを得なかったが、ふと誰かの視線を感じたのでその正体を探るとリビングの扉から桜が心配そうにこちらの様子を伺っていた。

この際巻き込んで有耶無耶にしてしまおう。

ごめんなさい桜さん、生贄になってもらいます。


「あー……桜さん、ただいまです」


ギロっと飛鳥の視線が桜に向く。

飛鳥がどういう表情をしていたか分かりたくないがきっと鬼の形相だったのだろう、ドタバタと焦る感じが伝わってきた。


「……何を見てるのかな?祐君と大事なお話し合いの最中なのが分からないのかな?桜さんも祐君を狙っているならタダじゃおかないよ?」


飛鳥の圧力に根負けしたのかリビングのドアを開けて桜が出迎えてくれる。

すっごい不服そうな顔でこちらを見てくるが気にしない。

好奇心は猫をも殺すという諺があるのだ、致し方ない。

コラテラルダメージだと思ってもらおう。


「……おかえり祐介君。よくも巻き込んでくれたわね」


「覗いているくらいなら助けて下さいよ」


「無茶言わないでよ。リビングでテレビを見てたら祐介君の部屋から不気味な笑い声が聞こえてきた時点でもう手遅れだったの。察してよ」


「また勝手に人の部屋に入ってやがったのか……」


「飛鳥さんの様子を見るに詳しくは聞かないけど色々大変だったのね。そういえば音羽ちゃんはすれ違わなかった?帰ってくるほんの少し前にここを出ていったんだけど」


「……まさか」


「うん?どうかした?」


「(姉さんの言っていた情報網って蓮条か……?それなら色々と説明がつくぞ……あいつが本気で隠形したら分からんくなる……こっちの様子が漏れていたのはそれでか……今度あったらタダじゃおかないからな……ああもうストーカー二人相手とか勘弁してくれよ……)」


ぶつふつと呟きながら頭の中で情報を整理するがどう考えても飛鳥と音羽が繋がっているとしか思えなかった。

そういえば良い取引がどうのと言っていたではないか。

これがそういう事なのか。




……姉と同級生で作られる包囲網とか結構辛くない?

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