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源次郎に魔術具の作成を依頼し、出来上がりの連絡をもらったのはそれから一週間後の事だった。
それまでの間、何をしていたのかといえば鬼殺しの結界が解除された水月の調整だ。
この間は急な事だったので万全の状態に出来なかった。
あくまで『刻呪』で抑えているだけなので、ある日突然水月が爆散するなんて可能性は全く無い訳では無い。
「ということで『創器』を水月に施そうと思う」
「ええで」
「ええんかい。一応うちの秘術だったと思うんだが」
「水月はもううちの一員やからええんよ。今更ほっぽり出そうとは思っとらんし、執事的な存在がおったら格好つくやん。鬼執事って響きも七神家にはぴったりやし」
「何処ぞの悪魔な執事に怒られろ」
軽いノリでOKが出た。
「ところで水月はどこに?」
「あー……それがなあ……」
「……何か不味いことに?」
「さっちゃんと武道場に」
「もう嫌な予感しかしない」
死んでなければいいのだが。
「……っと!「ズドンッ」……む……!「ゴギュッ」……です!「バゴッ」……ですか!」
家にある武道場に足を運んでみたら中から水月の声が。
サンドバッグに打ち込むような打撃音と共に。
「……開けたくないなぁ」
しかしそうも言っていられないので覚悟を決める。
「うぼあ」
扉を開けるとそこには理解したくない光景が広がっており、思わず口から変な声が漏れてしまった。。
天井の柱から吊るされた水月が文字通りサンドバッグになっていた。勿論その相手は言わずもがな。
「えっと……何をされているんでしょうか?」
皐月がこちらの声に反応して振り向いた。
運動でかいた汗がその動きに連動してキラキラと光る。
きっとテレビCMだったら様になっていた事だろう。
「打撃練習。なかなか良い手応えよ、一緒にどう?」
「皐月様の言う通りでございます祐介様。神無月は『鬼』を宿した人間を駒に攻めてくるでしょう。ならばこの水月、この身を差し出し効率的に訓練を行ってもらおうと思った次第でございます」
キリッとした表情で受け答えしてくる水月に頭痛がする。
「……さっき中から聞こえたお前の声は何だったんだ」
「皐月様の打撃が甘かったので口出しさせて頂いておりましたが何か?」
「もしかしなくてもなんだろうけど……」
「殴られる事に快感を覚えております。皐月様と出会いは衝撃的でした。これまで蹂躙する側だった私が手も足も出ない。最初その事実に少なからずショックを受けましたが、美しい方に殴られる事に次第に快感を感じる様になりました。鬼殺しの結界の影響で私の命が短いと分かった時はこの役目がすぐに終わるのだろうと悲観しておりましたが、その心配がなくなった今、貪欲に快楽を求めております」
長々と説明ありがとう。
「姉さんの肉壁発言で流した涙は一体何だったのか」
「美人でない誰かに殴られるかもしれないという事に涙しただけです。そうだ皐月様、今度良ければ飛鳥様もお誘い下さい。また違う感触を味わってみたいのです」
「あら浮気?私専用じゃなかったの?」
「これは浮気ではありません。異なる感触を得る事で皐月様の更なる向上を目的としているのですよ」
「ならいいわ」
「全然良くねえよ!ちゃっかり姉さんを巻き込むな!ああ……どうしてこうも手遅れの人間ばかりが周りに集まるんだ……」
一気に心配して損した気分になった。
鬼執事とか格好つけたネーミングは絶対合わない。
駄鬼でいいよもう。
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