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退魔の魔術師  作者: 霜野睦月
第2章 邂逅
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神無月についての昔話を源次郎は話してくれた。


「燈眞とは田舎が一緒でな、昔は野山を駆け回ったものよの。あいつの実家は柔道の教室を開いておって儂もそこに通っておった。とにかく強くてな、師範だった自分の親にも勝つくらいには腕っ節があって練習に付き合わされては何度も投げられたわい」


「聞いてる感じ魔術師要素が皆無だと思うんだけど」


「まあ最後まで聞けやい。その強さからオリンピックの出場選手に選ばれる程じゃったが、ある日を境に柔道の道を絶って魔術の道に進みよった。何故か分かるか?」


「七神家に恨みがあるって話だったけどそれが原因か?」


「直接的にはちと違ってな。儂の田舎には昔々に『人喰い鬼』が村人を襲っておったと言い伝えがあり、時代錯誤じゃが人柱を立てる習わしがあった。今でも地域によっては祭りなどで形式上の生贄を用意していたりするじゃろ?そんな感じだと思ってくれたらよい。じゃが燈眞の母が人柱に選ばれた年に事件は起こってしもうた。今までただの言い伝えだと思われておった事が現実のものになったのじゃ」


「その『人喰い鬼』が出たと?」


「うむ。ここまで話せば容易に想像がつくと思うが犠牲者は燈眞の母じゃ。そして燈眞はそれを見てしもうた。自分の母が喰われる様をな」


「あー……それはトラウマものだな」


「じゃが燈眞は逃げずに一人で戦いよった。『鬼』の腕を、脚を、首を折ってな。魔術の魔の字も当時は知らんかったのに成し遂げてしまいよった。それからは『鬼』を殺すために鍛錬の日々じゃったな」


「生身で『鬼』に勝つとかどんだけ強いんだよ」


「今だから分かるが正直言って燈眞は化け物じゃ。皐月の嬢ちゃんに匹敵しかねん。祐坊とて油断すればあっという間に死体になるであろう」


「うげー……」


「じゃがそれはあくまで若い頃の話。勝臣かつおみと行動しとった頃には全盛期は過ぎておったから安心せい」


「爺さんと一緒にいた事も知ってるのな」


「燈眞と再会出来たのは勝臣がおったからだからのう。儂の工房に来た頃は随分丸くなっておったわい。まあ勝臣が逝ってしまってからはおかしくなったがな」


鈴花からも聞いていたが祖父の勝臣の死が神無月に与えた影響はどうも大きかったようだ。

だが話を聞いても七神家を恨む要因が見つからない。


「話が戻るけど、神無月がうちを恨むのは何でだ?」


「鈴花の嬢ちゃんから聞いておらんのか?勝臣が死んだ原因はあいつの身にいた『鬼』の暴走じゃよ。ちなみにその場に居合わせたのは燈眞じゃ」


前当主である祖父が『鬼』の制御を出来なかった。

その信じられない事実に眉を顰める。


「何があったか詳しくは知らんが、二度も自分の目の前で『鬼』に人を殺されてはさすがの燈眞も堪えたんじゃろう」


ようやく勘違いをしていた事に気が付いた。

神無月が七神家に恨みを持っているのではない。

『鬼』そのものに恨みがあるのだと。

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