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源次郎のおっちゃんこと東雲源次郎。
魔術具の作成を専門にしている職人であり、作られた作品は魔術師なら喉から手が出る程の一品となるこちらの業界では名の通った人物である。
金髪モヒカンという奇抜な容姿を除けば至って普通なその辺にいそうなおじいちゃんなのだが、如何せんその容姿のせいで近付こうと思う人は少ない。
職人気質なところがあり、自分のやりたい仕事ばかりを選り好みしているせいで東雲工房の経営は万年赤字だと妻の由希が嘆いているのを昔から耳にしている。
仕事を選ばなければ古今東西の魔術師から依頼が殺到して莫大な資産を築けている筈だがそうしないのが職人としてのプライドだとか。
奥さん泣かせではあるが夫婦仲は良好らしい。
「それで祐坊や、仕事だと言っておったが何を作ればいいのだ?面白くなかったら引き受けんぞ?」
「そう言うと思った。母さんと姉さんが扱えない魔術を道具にして欲しいんだけどどうだろう?」
「ほほう、あの二人が扱えないとな。どうせ祐坊は扱えるんだろうから一度見せてみろ」
魔術具の作成に使用する道具で散らかった作業机の上に皿を一つ用意してそこに魔術を使えと源次郎に促される。
そして手をかざし浄化の炎を発現させた。
しげしげと炎を見つめる源次郎はニヤリと笑いこちらを向く。
「これはまた面白い物を持ってきたのう。浄化の炎とは大したもんじゃないか。まだ扱える者がおったとはの」
「あ、それが何か分かっちゃうのか」
「伊達に十数年仕事しとらんよ。昔にこれを道具化しろと偉そうにしとった奴がおったが突っぱねてやったわ。興味はあったんだがな、気に食わんから出入り禁止にしてやったのを思い出したわい。あの時の鳩が豆鉄砲食らった顔は傑作だったわ。後から一族総出で謝りに来よったが無視してやったらその場で皆からその無礼者に打首コールじゃったな」
「え、何それ怖い」
「扱える者が少なくなったからとかで見本を作っておきたいと言っておったの。一子相伝の秘術だから絶やす訳にはと涙ながらに懇願して一ヶ月は店に毎日来ておったな。結局由希に可哀想だし毎日来られても迷惑だと言われて仕方なしに作ったが、一年の期限付きにしたのでとっくの昔に炎は消えておる筈じゃ。なのに何故祐坊がこれを扱える?お前さんはこの魔術は覚えておらんかったではないか」
「ちょっと色々あって」
「そこを話さんかい馬鹿者。面倒臭がるのは祐坊の悪い所じゃぞ?」
叱られて素直に事の顛末を話す。
初めは静かに話を聞いていたが、神無月燈眞の名前が出てきた所で顔色が険しくなる。
「彼奴は鈴花の嬢ちゃんに殺されたと聞いていたが生きておったか。しかしまた厄介な者が絡んでおるのう」
「知っているのか?」
「知っているも何も幼馴染みじゃからな」
「はい?!聞いてないんだけど?!」
「祐坊が産まれる前に殺されておった筈じゃから話すこともなかったからのう。はあ……まだ七神に恨みを持っておるとは難儀な男じゃな……」
突然のカミングアウトである。




