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落ち着いたところで今回の依頼についての説明をするよう促す。 しかし睦月の野郎はどこに行ったんだ。
「あ、むっちゃんには依頼の件で別の仕事してもらっとるし心配せんでな?」
「逃げたんじゃなかったのか……まぁいいや。母さんがこっちまで出向くってことはいつもとは勝手が違う、ってことでいいんだよな?」
静かに首を縦に振る母。
久しぶりに見る真剣な雰囲気に少し緊張してしまう。
普段は砕けているが本当の姿は泣く子も黙る『雷神』の化身。
しかしそんなことはどうでもいいので割愛させてもらおう。
「メインは桜ちゃんの護衛。これについては依頼が解決するまでゆーちゃんのアパートで同居してもらうからよろしく。荷物はもう運んどいたから問題ないしな。 サブは桜ちゃんを狙う魔術師の確保。無理そうなら煮るなり焼くなり好きにしてもええから。 戦闘の場合、基本的にツーマンセルもしくはスリーマンセルで行動。むっちゃんが帰ってくるまではさっちゃんと組んどいて。あ、でも今回のサブターゲットはさっちゃんでもキツいかも。 ここまでで質問は?」
矢継ぎ早に説明がなされるが前半に意味の分からない発言があった。
「何故同居だ」
こちとら年頃の男だぞ。
自分の息子を信頼してのことなのか知らないが、いきなり見ず知らず女性と同居など普通有り得ないだろう。
何より我が家には爆発物という表現では全く足りない者達が頻繁に出没するというのに。
あぁ、胃薬のストックはあったかな……
「安全、快適、監視しやすい、さっちゃんとかあっちゃんとかよく出没しとるから」
「分かってるならバカ姉を実家に連れ戻してくれ。相手するのいい加減疲れる。 あと何でわざわざ御影さんを連れてきた?実家で匿っててもよかったんじゃないか?」
「他にはないんやなー?それじゃお開きってことにしよか。 場所は教えてあるけど桜ちゃんは勝手に1人でゆーちゃんの家に行かんと一緒に行ってな。昼間っから『出てくる』ようなことはないやろうけど念のためな」
我が姉のことと実家では匿えない理由に関して完全にスルーされ腑に落ちないが、母の言うことだ、これ以上の追求は無駄だと悟った。