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帰宅途中だったが実家へ蜻蛉帰りし、水月と鈴花とを連れて八雲神社に再び訪れたのは夜の十時頃。
水月だけでもよかったが、何かあった時のフォローとして鈴花も同行してもらっている。
「その冴えない男があんたの言っていた『鬼』ね。七神家の当主も一緒だとは思ってなかったけど、これからはマザコンって呼んだらいいかしら?」
「冴えないって言ってやるな。あと断じてマザコンではない。何かあった時にそっちに迷惑かけないように配慮しただけだ」
「なっちゃんおひさー」
「冴えない男……」
ひらひらと手を振り呑気に挨拶する鈴花とは対照的に夏樹の言葉に哀愁を漂わせる水月が何とも可哀想である。
そんな事はさておき結界についてだ。
「何とか出来るかもって話だが」
「そうだったわねマザコン。いい?これから見せるのは八雲神社の秘技。他言無用だからどっかに漏らしたら天罰が下るわよ」
「解決してくれるならそれくらい約束する」
「ならいいけど。それじゃ着いてきて」
巫女服姿の夏樹に連れられて八雲神社の本殿の中に案内される。
参拝客は遅い時間なので誰もいないが念の為ということで中に入ってから扉が閉められる。
蝋燭が五芒星を描くように配置されている場所の中心に水月を立たせるように指示され、水月はそれに従う。
「始めるわよ」
掛け声と同時に夏樹の魔力が空間を満たす。
蝋燭に灯された火が赤から青へと変化し術が発動する。
「ぐっ……ぎがっ……」
青い火が水月にまとわりつき苦しみ出した。
心配して駆け寄ろうとするが夏樹に睨まれて立ち止まる。
「もう少しだから待ちなさいっ」
額に汗を浮かべて術の発動を続ける夏樹。
巫女服の袖から人形を取り出し水月に投げ付けた。
すると水月の身体から力が抜けその場に倒れ込んでしまう。
「おい、何をして……」
「いいから黙って見てる!」
倒れ込んだ水月から何かが人形に移っていく。
それが何なのか確かめるべく『遠慈』の眼を発動する。
どうやら結界に囚われた水月の魂が移動したようだ。
「魂を抜き取った……?」
そう言い表すしかなかった。
しかしそれでは肉体は朽ち果てていかざるを得ない。
「その通りよ。でもこれからが本番だから集中させて」
青い火は水月の身体から人形に移動したまま残っている。
眼を凝らすと魂を締め付けていた鎖が溶けているではないか。
「おいおいマジかよ……」
浄化されるかの如く鎖が消えてゆき人形には魂だけが宿った。
「これで終わりよっ!」
人形から水月の肉体へと魂が戻っていく。
魂の戻った水月の身体が数秒痙攣を起こしてから鎮まる。
「ふう……どう?これで解決したんじゃない?」
「ドアホ!何もしとらん人の身体に『鬼』の魂を宿したらどうなるか忘れとるんか祐介!」
「えっ?」
鈴花の叫びに夏樹は失敗したのかと不安そうな顔をする。
そうだ、肉体が耐え切れないではないか。
「間に合えよ!」
今からでは『創器』を用いても間に合わない。
ならばせめて応急処置として『鬼』の力を抑えなければと水月に駆け寄り、身体に触れ『刻呪』を発動。
致死性を無くして封印だけを目的とすれば何とかなる筈。
水月の身体に呪印を刻み『鬼』の力を抑え込む。
「間に合ったか……?」
肉体が爆散しない事を確認してホッと一息ついた。
この場が血塗れにならなくて良かった。




