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退魔の魔術師  作者: 霜野睦月
第2章 邂逅
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今日会ったばかりの水月を慰めるという奇妙な出来事に戸惑いながら、この微妙な空気を変えようと新たに質問する事にした。

おっさんが真顔で涙しているのはちょっと気味が悪い。


「水月に使われた魔術って何だったんだ?」


「それが分からんのよね。肉体を造り変える術ではないのは確かなんやけどさっぱりや」


「母さんでも分からないか」


「せやから祐介を呼んだんや。ちょっと視てみてや」


「まあそうなるわな。さて何が出るのやら……」


自分の内に居る『遠慈えんじ』に助力を頼む。


「(聞いていただろうから説明はなしだ。頼んだぞ)」


「(相分かった。では儂の眼を貸そう)」


その言葉に呼応する形で祐介の目の色が黒から橙に変化する。

鈴花と飛鳥は見慣れたものなので特に反応はなかったが、桜と水月はその変化に驚いている事が何とも新鮮だ。

後で何を言われるのか少し面倒だなと思いつつも水月を観察し始める。


まず視えてきたのは魔力の通り道、魔力回路と呼ばれる魔術を扱う者にとっての生命線。

これがなければ魔力を外に出す事が出来ず、魔術が発動する事は無い。


回路は魔術師にとっては当たり前のものだが一般人にはまず存在しない。

正確には存在しない訳では無いが、普通に暮らしていたら発現する事は滅多にない。

皐月の様に何かのきっかけで覚醒する事もあるがそれはほんの一握りだ。

大体の魔術師は先祖代々の回路を受け継いでは育て、次の代へと移す。それを繰り返して連綿と紡いでいく。

回路が強力になれば扱える魔術の幅が増えるので魔術師としては途切らせないよう必死に守っている。


だが今の身体は一般人、それも魔術に縁もゆかりも無いであろうホームレスだと水月自身が言っていたのに魔力回路が存在しているのは不自然である。

だがそれだけではない。

現在進行形で魔力回路に魔力が流れて何が発動している。


「水月、何か魔術を発動しているか?」


「いえ何もしておりませんよ?」


「変だな……回路が動いているのに本人は発動していないと言っている……もう一度確認だが本当に、何も、発動していないんだな?」


「ええ、その通りでございます」


疑問は魔力回路に流れる魔力を詳しく追う事で判明した。

水月の心臓部を中心に魔力が集中していたのだ。

そして力を強めて重点的に視る事でようやく確認が出来た。


そこにあったのは魔術によって作られた檻。


禍々しく鎖が巻き付き、何かが外に出ないよう堅牢にされていた。


では中にあるものは何か。






蝋燭に灯した火の様に揺らめく水月の魂だった。

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