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失禁鬼やらジョバ鬼やら誰にも需要のない不名誉極まりない称号を得た水月の情報が祐介に伝えられたのはそれから三日後。
「何かと漏らす『鬼』を捕まえたからちょっと見に来いや。あっちゃんと桜ちゃんも一緒でええさかいな」
鈴花からの一報を聞いた祐介は何言ってんだこいつと思った。
漏らすって何をだよ。情報か?情報だよな?
嫌な予感を胸に実家を訪れることになったのだが……
「お帰りなさいませ。鈴花様からご帰宅される事を伺っております。案内致しますのでどうぞこちらへ」
作務衣に身を包んだ水月がそこにいた。
長年七神家にいたのではと錯覚しそうになるくらい違和感なく出迎えていた。
祐介と飛鳥は気配からすぐにこいつが『鬼』だと気づいたが、桜はお手伝いさんかな?くらいにしか思えないくらいには自然な対応だった。
勝手知ったる実家だが案内を受ける道中で質問をする。
「お前が母さんの言っていた『鬼』か?」
その言葉に桜が身体を強ばらせた。
「左様でございます。自己紹介がまだでございましたね。水月と申します、以後お見知りおきを」
やたらと丁寧な対応に鈴花の言っていた漏らすとは一体何の事か訳が分からなくなる。
というか何故家にいるのか。
「私がここにいるのは鈴花様と皐月様に捕まったからでございます。元々は燈眞様に呼び出されたのですが、右翼曲折ありまして七神家に仕える事となった次第です。皆様に危害を加えるつもりは全く御座いませんのでご安心下さい」
「はいそうですかとは言えないんだが」
「そこは徐々に信頼を勝ち取ることにしましょう。この命尽きるまで七神家に仕える事が私の今の使命ですから」
「お、おう。まあ頑張ってくれ」
澄んだ目で忠誠心を示す水月に困惑が隠せない祐介達。
そんな話をしているうちに鈴花の元に着いたようだ。
「鈴花様、ご子息様達が到着されました」
「ほいほい、入ってええでー」
襖を開けた部屋には鈴花がましろとコマを撫で繰り回しながら待っていた。
桜がそれを羨ましそうに見ているがとりあえず放置だ。
「従順な『鬼』がいるみたいだけど一体どういう事だ?それにこいつの言っていた燈眞って奴が母さんの言ってた狸爺か?」
「そう矢継ぎ早に質問せんの。とりあえず座りいや。水月、お茶とお菓子を用意してきて」
「はい、ただいま。では失礼致します」
頭を下げ台所へ向かう水月を見送り、客間に用意されていた座布団に座ることにした祐介達。
座るのを確認してから鈴花は口を開いた。
「まず水月について話そか。あいつは狸爺の実験で人工的に作られた『鬼』で間違いない。というかうちら七神家の人間と同じ存在といってもええかもしれん」




