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『雷公』のプレッシャーに負け失禁してしまった水月だったが、何とか意識は残していた。
ここで気を失っては不敬に取られかねないと思ったからだ。
「決して哀れだとは思っておりません!ただ、私と同様の状態ではないかと思った次第でして……お救いできるのであればとっ」
「それを哀れみと言わずして何と言うか。こちらの事情など知らぬのにその発言、無知なるは罪ぞ」
「ど、どうか御容赦をっ」
自身の作った水溜まりの上で土下座をする水月。
最早命乞いでしかなかったが、皐月の発言で救われることになった。
「ここでこいつを消したら師匠に嫌われるわよ?歳食ってる割に短気なのは悪い癖よ」
「むう……暴力弟子に言われるのは癪だが鈴花に嫌われるのは勘弁願いたいな。仕方ない、引っ込むとしようか」
額から角が消えると同時に『鬼』の気配なくなり元の姿に戻る。
「あーあ、雷ちゃんやらかしてしもたなあ。はあ、掃除が面倒やわ……さっちゃん、ちょちょいっとやっといてな」
「そこは飼い主がして下さいよ」
「やだー」
「子供みたいなこと言わないで下さいって……やらかした本人にやらせたらどうです?」
「それ名案やな!水月、後で掃除しといてな」
「は、ははははは」
ぞんざいに扱われる『雷公』を見てしまった水月は頭がおかしくなりそうに、いやなってしまい笑うしかなかった。
「(私はこれからどうなってしまうのか……)」
雑巾を渡され、自らの粗相を片付ける水月の肩には虚しくも哀愁が漂っていた。




