8
その日のうちに七神家へと連行された『鬼』こと水月は上座に座る人物に恐れ慄いていた。
七神家当主、七神鈴花という『鬼』に。
「さっちゃん、むっちゃん、良くやったで。狸爺に繋がる手がかりがやっと見つかったのはホンマ喜ばしいことや」
「姉貴が全部やった事なんで僕が褒められる筋合いはないですよ」
「そうよ師匠、睦月なんか着いてきて吐いてただけなんだから褒められるのは私だけでいいのよ」
「それは言わなくてもいいだろう……」
「あんまりむっちゃんをイジメたらイカンよ?むっちゃんがおるから情報収集に困らんくなっとるんやから。今回はたまたま見つかっただけなんは理解しときや?」
「はーい……」
口調こそ軽いが、内から感じられる重圧に押し潰されそうになる水月。
冷や汗が止まらず、頭の中は有り得ない、あってはならないと否定の感情が渦巻いていた。
何故、此処にいらっしゃるのか。
「で、水月言うんやったな、色々聞かせてもらうで?」
「……その前に一つお聞き願いたいっ!そこにいらっしゃるのは『雷公』様で相違ないだろうか……?」
「なんや知っとるんか、せやけど何でや?」
「ああ……何たる事か……姿をお見せになられなくなったと聞いてから数十年……斯様な所に捕らえられているとは嘆かわしい限りであります……」
『鬼』の世界では知らぬ者はいない頂点の一角。
そんな雲の上の存在が自分と同じ状況に置かれていると考えてしまった水月だが、その同情に値する発言は過ちだった。
鈴花の身体から『鬼』の濃密な気配が溢れ出し、金色の双角が額に現れる。そして周囲に落ちる雷が空気を焦がしていく。
「貴様、我が哀れだと申すか」
「がはっ」
『雷公』に問いかけられた途端、水月の頭が地面へと押し付けられ、その重圧に呼吸すらままならなくなる。
生殺与奪が気分次第というのは受ける側からすればたまったものでは無いが、絶対的な存在による力というものはそれを可能にしてしまう。
現に言葉一つで這いつくばらせてしまっている。
「答えよ、我は哀れか?」
「あ……がっ……」
その問いかけがトドメになった。
水月は本日二回目の暖かい水溜まりを足元に広げる事となった。




