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今日はちょっと早めに
黙祷を終えた皐月は怒りを滲ませながら睦月に指示を出す。
「師匠に連絡しておいて。この人達を弔っておくから」
「げほっ……ああ、了解した」
吐いた胃液で声を掠れさせながらも携帯で連絡を取る。
数回のコール音ですぐに鈴花に繋がった。
「鈴花さん、どうも手遅れだったみたいで被害者多数でした。ええ……姉が言うには実験が行われていたと……はい、『鬼』の気配もあったそうです。祐介からの情報は正しかったと思われます。……分かりました、引き続き調査は続行します。では」
通話を終えたと同時に熱風が室内に溢れた。
皐月の魔術での火葬が始まったようだった。
数分もしないうちに無数の遺体は骨も残さず灰となった。
「次行くわよ」
最後の建物も今までと同様に結界が張られていたが、これまでの三ヶ所とは異なり、破れかけていなかった。どうやら当たりのようだ。
「……邪魔っ!」
怒りが冷めないままの皐月の拳が結界を捉えるが残念ながらビクともしなかった。
その事実に皐月は更に怒りのボルテージを上げる。
「邪魔だって言ってるでしょ!!!」
嵐のような連打が辺りに鈍い音を響かせる。
その猛攻に徐々に結界が揺らぎ、耐え切れなくなってその役目を終えて消え去った。
建物内に侵入し調査を開始するが、先程のような惨劇はここでは起きていなかった。その事に睦月は安堵するが、皐月の顔はより一層険しくなっていた。
「出てきなさい」
発言と同時に上の階の床を割って何者かが落ちてきた。
その何者かは額に角を生やしていた。
「燈眞様を追っているのは貴様達か?ここに来た者は排除せよと申し受けている。悪く思うなよ人間共」
「あんたみたいな雑魚に用はないの。さっさと燈眞様とやらを出しなさい。さもなくば……」
「さもなくばなんだと言うのだ人間」
「呼ぶまで殴るだけよ!!!」
皐月の魔力が荒れ狂い威圧する。
「ほう、なかなかの魔力だな人間。捕えたならばさぞお喜びになられる事だろう。飛んで火に入る夏の虫とはこのこげぼあっ」
有言実行。
言い切る前に皐月の拳が『鬼』の顔を抉り壁へ激突させる。
「ごはっ……なかなかやるではないか人間。ではこちらも応えようではながばっ」
鳩尾にズドンと一撃。
身体をくの字に曲げて血を吐き倒れ込む『鬼』。
だがそれで終わる皐月ではない。
首を掴み、まるで重さなど感じさせない勢いで一本背負いよろしく地面へと叩き付ける。
「どう?まだやる?」
「ぐげっ……はあはあ、こっこれしきで燈眞様をお呼びする訳がなかろうぼあっ」
蹴り上げられて宙に浮く『鬼』。
宙に浮いた状態でサンドバッグの様に連打を食らわせる。
〆にサマーソルトを決め込み、『鬼』の頭は天井に突き刺さりぷらんとぶら下がった。
「姉貴、やり過ぎて聞くに聞けないのはちょっと……」
「ああん?」
「すみませんでした続きをどうぞ」
メンチを切られて即座に引っ込む睦月。
『鬼』以上の『鬼』がそこにいた。




