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退魔の魔術師  作者: 霜野睦月
第2章 邂逅
36/77

5

皐月の過去を少し

蒼崎皐月は正義漢である。

漢だと言うと拳骨が飛んで来てしまうのでその言い方は止めた方がいいかもしれないが、とにかく曲がった事が大嫌いだ。


幼少期、まだ魔術を会得する前から何かと衝突の多い女の子だった。

正しい事は正しいと胸を張っていたが故に、周囲からは煙たがれる存在だったが、その姿に惹かれる者も多くいた。


やっかみの類は全て弟の睦月に降りかかっていたのだが、そんな事が耳に入れば相手には鉄拳制裁が待っていた。


高校生の時、皐月を貶めようと計画した者がいた。

相手は女だから数には叶わないだろうと有志を募り、睦月を人質に巻き込んでの乱闘騒ぎが起きた。

元々素材の良かった顔立ちに加え、第二次成長を迎えて女子高生とは思えぬ豊満な体型となった皐月に、数多の男子が下心を抱いて言い寄った。

全て歯牙にもかけず相手にすることなく振っていたのだが、思春期男子特有の万能感を無下にされた恨みが積もり積もって爆発した。


一対百。


何処の世紀末漫画かと遠目に見ていた者達は思ったが、この出来事がきっかけを与えてしまった。

目覚めさせてしまった。

内なる力を表に出すことを覚えてしまった。

魔術の片鱗を体感してしまった。


当時を知る者は皆こう語った。

人が面白いように飛び交い、次々と男達が倒れ、最後に拳を突き上げた皐月の姿はある種の神々しさを醸し出していたと。


それからの皐月は魔術を使って人助けを行っていた。

誰が助けを求めたのなら何処までも駆け付けた。

道が分からず立ち往生している老人がいれば丁寧に案内したり、飼い犬が行方不明になったのなら山の中まで捜索したりする事もあった。

果ては顔の厳ついヤのつくお兄さん達とドンパチ騒ぎになったりと危ない橋を渡った事もあったが、何でも出来てしまう皐月にとっては些事であった。


しかし、当時の皐月には出来ないことがあった。

心霊現象、悪霊退治などのオカルトに分類されることに関しては全く歯が立たなかった。

無意識に身体強化の魔術は使えていても、肉体の影響がないものに対してはからきしだったからだ。

ただただ悔しさがそこにはあった。


だが出来ないからといって努力を怠る皐月ではなかった。

誰からの師事を受けることなく、自身の才能だけで対処出来るようになったのは高校卒業間近だった。

ヒーロー、何でも屋、暴力の権化etc.

様々な通り名で呼ばれる皐月が卒業するとなれば助けてくれる人間は他に誰がいるのかと依頼が殺到することは容易に想像出来た。

卒業までの間、多忙を過ごす皐月はこれまで解決出来ていなかったオカルト関係にも手を出してようやく気がついた。

自分以外にも対処出来る人間がいる事に。

助かった人がいるのは喜ばしいことだが、先を越された気がして我慢ならなかった。


皐月は探した。解決したのは、横取りしたのは誰だと。

そして見つけた。七神という家の存在を。

『雷神』七神鈴花を。


「おたくが噂になっとるヒーローちゃんやね。あんまり目立ち過ぎるのはいかんよ?こっちの領分っていうもんがあるねんから」


対面した時に皐月は直感した。

この人物には敵わない。

得体の知れない何かを持っていると。

しかし若気の至りというのは恐ろしいもので、正体を知らぬままかかっていく。


「知らないわよ。私が出来ることを出来る範囲でしてただけ。それ以上でもそれ以下でもないわ」


「さよか。ほなちょっと話し合いをしよか。大丈夫や、怪我くらい幾らでも治したるさかい」


自尊心が木っ端微塵になるまで話し合いという名の蹂躙は続き、意識を失うまで身体強化を発動した皐月の拳が届くことは無かった。


「ふー……年甲斐もなくはしゃいでしもたな……にしてもナニモンなんやこの子、身体強化だけでうちとやり合うとかちょっとしたバケモンやで……とりあえず、他のとこに持ってかれる前にうちに引き入れとこか」


この一件で鈴花の目に留まりスカウトされ、晴れて七神家の関係者となった。

魔術に本格的に触れてからは『天災』の魔術師と呼ばれるまでにそう時間はかからなかった。


PV1000突破!

続けて読んでくださっている方々に感謝です!

これからもよろしくお願いします!

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