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襲撃を受けた翌日、桜と飛鳥を連れて実家に訪れ、母の鈴花に報告を行っていた。
「『鬼』が出よったか。話を聞く限りやと人工的かもしれんのがまた厄介やなあ……十中八九狸爺の仕業なんやろうな……桜ちゃんが無事で良かったけど同じ事になってしもたらアカンな」
「そこは俺がカバーする。四六時中とまではいかないが、視ていれば駆け付けは可能だ」
「おや、『遠慈』と仲良くなれたんか?」
「今回はやけに協力的で正直驚いている。いつもなら知らぬ存ぜぬなのにな。もしかしたら『水姫』にせっつかれたのかもしれないけど」
「あの子、飛鳥のこと大好きやもんなあ。まあそれはええわ……本題に入ろか。狸爺の居所はむっちゃんに探してもらっとるけどまだ見つからんのが現状や。こっちでの鍛錬が終わったさっちゃんを合流させて一緒に行動させたから時間の問題やと思う。祐介は引き続き桜ちゃんの護衛と、敵がいたらそれの撃滅。飛鳥は祐介と一緒におってええさかいフォローに回っといて」
「え、姉さんも一緒なのか……」
「二の舞にはならない」
「気合十分で結構。せやせや、桜ちゃんは犬好きか?」
「へ?あ、苦手ではないですけど」
「ほなちょっと待っといてな、呼んでくるさかい」
母はそう言っては家の奥に引っ込むこと数分。
身体は黒いが、お腹と足が真っ白な小さい柴犬を連れて戻ってきた。
「コマちゃん、顔と匂い覚えといて」
七神家の番犬、コマである。
くりんと丸まった尻尾を元気よく振り、すぐに記憶し終えたのかワンッとひと鳴きする。
「えっと、この子は?」
「うちの番犬。ましろと同じ存在だよ」
「嬢ちゃん、よろしゅうな」
愛くるしい柴犬からとは思えぬハスキーボイスが発せられる。自身の前足でポンッと桜の足へお手をしている姿と何ともミスマッチだ。
「喋った?!可愛いのにめっちゃ声渋い!!」
「コマちゃんは優秀な子やで。何か異変があったらすぐうちに知らせてくれるさかい、念の為の保険や」
鈴花に撫でられコマは顔をへにゃっとさせている。
その姿を見て桜も顔をへにゃっとさせている。撫でたそう手をワキワキさせているが一応遠慮はしているようだ。
「報告と方針、顔合わせも終わったことやし解散しよか」
「分かった。それじゃ母さんも気をつけて」
実家を後にしてその日はマンションへ戻る事となった。
一方で蒼崎姉弟は件の魔術師の消息を追っていた。
鈴花から依頼があってからというもの、全く姿を見せない男に睦月は業を煮やしていたが、襲撃があったと祐介からの連絡を受けてようやく尻尾を見せたと感じ、合流した姉と一緒に現場を訪れていた。
「姉貴、何かあったか?」
「んー……結界の痕跡はあるんだけどわざと残してるっぽい。ブラフだろうね。『鬼』の気配は綺麗さっぱり無くなってる。自然発生なら発生源の霊気溜まりが必ずあるのに、一切ないのはやっぱり人工的なものと推定できるとして……依り代になったのはじゃあ誰なんだって話よね」
「手がかりは依り代になった男性という事だけか……行方不明者の情報を虱潰しにしても上手く隠されているだろうし、もうちょっと他に何かないものか……」
「鈴花さんから逃げ仰せたって言う時点で私達が探し出すって不可能じゃないかしら」
「薄々感じてたけどやっぱそうだよなあ……」
「襲撃しているところを襲撃するとか」
「その場に居合わせるのって相当運がないと無理な気が」
「ここら一帯に自然発生している霊気溜りを全部潰して、人工的な発生をしたらすぐ分かるようにするとか?」
「姉貴なら出来かねないのが怖い」
「……あ、そうか、やっちゃえばいいのか」
「ちょ、ちょっと姉貴!?タンマタンマ!!何考えてるのか聞かせてもらってからでいいかな?こっちの身に危険が迫ってそうで嫌な予感がするんだけど」
「ふっふっふっ……」
にんまりと満面の笑みを浮かべて耳打ちをする皐月。
「うわあ……」
その度し難い内容に睦月はドン引きした。
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