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更新を犠牲に書けなかった続きです
呆気ないものだと『鬼』は吠える。
目的は気絶しているこの人物を連れ去ることただ一つ。後は好きにしていいと言われており、もっと暴れられるものだと期待をしていたがなんてことは無かった。
物足りなさを感じながらも桜へ近づき運ぼうとする。
だが掴み上げることは叶わなかった。
伸ばしたはずの腕がないのだ。足元に目線を向ければ転がっている。
「いたた……」
瓦礫の中から声が聞こえた。
撥ね飛ばし、息絶えたと思っていた者がまだ生きていた。
「桜さんには触らせない……」
頭から血を流し、腕は在らぬ方向に曲がり、死に体でしかない女は立ち上がりこちらを睨んでいる。
『鬼』の頭の中は混乱していた。
女など取るに足りぬと。一方的な暴力の前には赤子も同然の存在であると。唯の贄でしかないと。殺した筈だと。だが何故生きているのか。自分の腕は何故落ちているのか。
「『封鬼再臨』」
『鬼』は更に混乱する事となる。
死に体だった女の身体が蒼い魔力を迸らせ元に戻っていく。それだけではない。額に浮かぶは青白く揺らめく双角。
「桜さんが起きる前に片付ける」
女の宣言で我に返り、再度潰してしまえば問題ないと思考を切り替える。
落ちた腕を生やし直し、剛腕を持って粉砕せしめんと女へ進撃する。
「ガア……?」
しようとしたが『鬼』は転んで手をついていた。
脚がないではないか。一体何が起きているというのだ。
「無様。そんなに首を落とされたいの?」
女はゆっくりとこちらに歩んでくる。
『鬼』は女の言っている意味が分からなかった。
蹂躙する側だという自負が理解を拒んだ。
「それじゃさようなら」
女の手にはいつの間にか刀の柄が握られていた。
それで何が出来るのかと思うが、周囲の水が集まり刃を成していく。
距離はまだ離れている。脚を生やし次に備えなければと考えるが『鬼』は身動きが取れない。
首だけを外に出す形で水球が身体を覆っていた。力の限り抗うが抵抗は無意味であった。
女は近づき水の刃をこちらに向けて振り下ろす。
これから起きるであろう事象に心が凍りつく。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
だが、結末は変わらない。
死への恐怖に苛まれた『鬼』の首は虚しくも地面へ落ちることとなった。
――――――
「『水姫』、ありがとう」
「(全く、あんな低級の『鬼』に一発貰うとは油断しよってからに。飛鳥が死ねば妾は消えてしまうのを忘れておるまいな?そなただけの身体ではないのだぞ?)」
「忘れてない。『鬼』が出てくるなんて思ってもいなかったから準備が足りなかった。反省する」
「(ならば良い。『雷公』の奴からそれとなしに聞いてはおったがどうにもきな臭いのう……『鬼』が現れるなぞ滅多にない筈じゃし、先のは自然発生したものと違う感じがしておったぞ)」
「この事はお母さんにも祐君にも話しておく」
「(うむ。身体は戻したが、流れた血は戻っておらぬからしっかり休むのじゃぞ)」
「分かってる。心配かけてごめん」
自分の身体に棲う者へ感謝を述べてから桜に駆け寄り状態を確認する。
気絶した際に頭を打ったのか少し腫れている箇所があるが、その他に異常は見られなかったので安堵する。
結界は『鬼』を倒した事で解除されたのだろう。
飛鳥が激突した建物は既に元に戻っており、先程までいなかった人の姿が見えるようになってきた。
『鬼』の遺体は塵となり消え去ったので跡形も無い。
桜を肩に担ぎ、飛鳥は愛する弟の元へと急ぐのであった。
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