27
桜を連れて結界の中を探索する飛鳥。
マンションの方向に進むにつれて人の気配がどんどん無くなることから、人通りの多かった所は基点が少なく、進む方向に集中しているだろうと推察し行動に移したが、めぼしい箇所を訪れたものの結界の楔は全く見つからなかった。
七神家に関係のあった者の仕業だからと念頭に置いて行動していたのが裏目に出ていた。
より深くへと進んでいることに気付かぬまま、飛鳥達は『敵』に遭遇してしまった。
「…………」
静かに佇む『敵』は一見何処にでもいる成人男性だが、その身から漂うのはハッキリと視えてしまう程の怨念。生きとし生けるものを呪い、生命を喰らい、怨嗟を巻き散らかさんとする害悪の塊。悪霊に取り憑かれたからとここまでに増長する事は無い。
ならば『コレ』は何なのか。
「ギャヒ……グギャギャギャギャギャギャギャギャ」
視線をこちらに向けて、正気を削るような不愉快な嗤いを辺りに響かせる。
ゴリゴリと骨が砕ける音がすると思えば、徐々に骨格を変え、筋肉がはち切れんばかりに膨れ上がる。
額に一本の角を生やし、人として有るべき姿はどこにもなくなった。
口角からだらしなく涎を垂らし、敵意を向けてくる。
「『鬼』がこんな所に出てくるなんて……」
飛鳥は目の前の光景に愕然とした。
本来居てはならない厄災の象徴、忌むべき存在が目の前にいることに。
「桜さんここから離れ……っ!」
桜へと指示を出そうとするが『鬼』の行動は早かった。
膂力に物を言わせた突進がこちらの身体を捉え、トラックに轢かれたかのように飛鳥は吹き飛ぶ。
近くにあった建物に衝突したと同時にぐしゃっと肉の潰れる音がした。
「あ……あ……」
遠くで瓦礫に埋もれる飛鳥、目の前には得体の知れない恐怖。桜は嗚咽を漏らしながらその光景を最後に意識を失った。
明日の更新に続きます




