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退魔の魔術師  作者: 霜野睦月
第1章 遭遇
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ちょっとした過去回

祐介と会うまでのやりとりを書いてみました

蒼崎探偵社を訪れたのは怪奇現象に遭い続けていることを心配した大学時代の同級生から紹介を受けてのことだった。

探偵社と銘打っているが自分の問題を解決する事など果たして出来るのだろうか。


この迷惑極まりない体質に苦労してもう何年になるだろう。

有名と言われる霊媒師に会ったり、霊験あらたかな場所でお祓いをしてもらったりと色々と手を尽くしてきたがどれも効果はなかった。

両親には金銭的に迷惑をかけたこともあった。

友人関係に深い溝を生むこともあった。

一生このままでいいやと涙で枕を濡らす日もあった。

期待などもう微塵ない、するだけ無駄だと悟っている。

話を聞くだけ聞いて駄目だったと同級生には伝える事にしてまた一人の生活に戻ろう。


「はぁ……変な事に巻き込まれなきゃいいけど……」


約束の時間は迫っているので事務所の扉を開けて中に入る。部屋にはテーブルを挟んで二人の男女が座っており、何かの話をしていたようだったが入ってきた私へと目線を向けてきた。


「依頼人が来たようなのでこの話はまた今度に」


「仕事のアポあったんなら前もって言っといてやむっちゃん……うん?んんん?」


男性の方がここの主なのは会話から察する事が出来るが、こちらを凝視している和服で妙齢の女性は一体……


「おったー!!??確保!確保ー!!むっちゃん、はよ事務所の鍵閉めてー!!」


奇声を上げてながら目にも止まらない速さで女性が正面から私へと抱き着いてくる。突然のことで頭がパニックになり狼狽えてしまう。

男性の方はCLOSEのプレートを扉にかけて鍵を閉めているのが横目に見えた。


「(え、え、な、なに!?何が起こってるの!?)」


「でかしたでむっちゃん!うちが探しとったんこの子や!」


「鈴花さん、依頼人が困ってるのでそれくらいにしてあげて下さい。呆然としちゃってるじゃないですか。とりあえず座ってもらいましょう」


促されるまま席に着かされるが、鈴花さんと呼ばれた女性は隣に座ったまま一向に腕を離してくれない。早速変な事に巻き込まれてしまったと頭を抱えたくなる。


そこからは自己紹介に始まり、私の体質を話す事になった。解決出来ないだろうとたかを括っていたので、その態度が出ていたのか苦笑いしながら蒼崎睦月と名乗る男性はこちらの話を聞いていた。

ぱっと見ホストにしか見えなかったので胡散臭さを感じて余計に態度に出ていたのもあるだろう。

しかし隣の鈴花さんは話を進めていくうちにポロポロと泣き出しているではないか。


「桜ちゃん、苦労しとったんやなあ……ズズッ……ティッシュどこやむっちゃん……」


不気味がる人は数あれど、泣く人は初めてだったので驚いてしまった。というかいつまでこの人はここにいるのだろうか。


「御影桜さん、正直な話をすると私には貴女の体質に関して出来ることは何もありません」


ほら見た事か。


「ですが、そこで号泣している人なら可能でしょう」


何を言っているのかとハトが豆鉄砲を食らったかの表情をしていたことだろう。


「七神鈴花さんは退魔を専門としている方です。そうは見えないでしょうが腕は保証します。これも何かの縁です鈴花さん、協力してくれますね?」


「ずびーっ……もちろんや、任せとき!うちの息子が何とかしてくれる!」


「はい?」


後日、息子の七神祐介と生活を共にすることになるだろうとは、この時これっぽっちも考えられる筈がなかった。

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