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食事を終えてリビングでお茶を飲みながらテレビを見る。どこぞの芸能人が浮気しただの現政権の支持率がだのと当たり障りのないニュースが流れている。
昨夜の被害者に関するものは流れてこないので睦月の事後処理は問題ないようだ。すぐに睦月を捕まえてくれたのだろう、皐月さんと別れる前に身分証を渡しておいて正解だった。
被害者家族には申し訳ないが遺体を残すわけにはいかなかった。吸血種の厄介なところは異常な生命力だけでなく、ウイルスのように感染し拡大する繁殖力。吸血種の体液が体内に入ってしまうと時間経過で問答無用に屍兵へと作り変えてしまう。理性は無くなり飢えた獣の如く目に付いた生き物を貪り、更に感染を拡大させる。人だけでなく動物も対象であり、放置すれば地獄絵図の様相、正に阿鼻叫喚となる。
基本的に早期解決が図られるので吸血種の数は少ないが、親玉となる個体はまだ発見されておらず根絶が出来ていないのが現状だ。
「御影さん、ちょっと出かけてきます」
「今日も出かけるの?あんまり遅くならないようにね」
「見回りだけですからすぐ帰ってきますよ」
昨夜の出来事は御影さんには詳しく話していない。良くないものがいたから退治してきたとしか説明しなかった。血なまぐさい話はしない方が精神衛生上よいだろう。昨日の今日で吸血種と再び遭遇することは無いと信じ、上着を羽織って外に出る。
住んでいるマンション一帯には結界が張ってあるので怪奇現象が起こることはない筈だが、念の為様子を見ておかねば。見ておかねばなんだが……
「なんちゅう量だ……」
結界に阻まれているとはいえ、外には足の踏み場もない数の浮遊霊が押し寄せていた。一部の霊は後ろから押されて結界に触れ勝手に消えている。都会の満員電車か何かかこれは。
ちょっと勘弁して欲しい。げっそりである。正直なところ御影さんの体質を舐めていた。
「毎晩こうなれば気味悪がられるわな……結界を弄らないと地域住民に迷惑かけるなこりゃ……」
片っ端から除霊を行い部屋に戻った頃には日付は翌日となっていた。御影さんが申し訳なさそうに出迎えてくれたのが逆に申し訳なかった。




