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自室にてのんびりと猫動画を漁っていたらあっという間に昼である。
猫は時間の概念を捻じ曲げる存在。
猫は宇宙、宇宙は猫なのだ。
ゴソゴソと隣の部屋から物を動かす音が聞こえるが、御影さんが荷解きをしているのだろう。
2LDKの間取りなので一緒の部屋にはならない。
同じ部屋、同じベッドで寝ることは無いので安心してほしい。
残念だとか邪な気持ちは微塵もない、ないったらない。
元々客間として使っていたので侵略者達の私物がいくらか置いてあるくらいで片付ける物は少ない。
全部ウォークインクローゼットに押し込めば終わりだ。
「さて、いい時間だし電話してみるか」
携帯を操作し母の番号を選択。
プルプルとコール音が数秒続いた後通話が開始される。
「何の用やー?」
昨日ぶりの母の声が耳に届く。
後ろで雷鳴が響いているが気にしない。
割といつもの事だ。
「御影さんと昨夜遭遇した人物について聞きたい」
「単刀直入やねえ。ちょっと待ってな、さっちゃーん、ちょっと休憩やー!……ほい、お待たせ。桜ちゃんの事は本人からある程度聞いたんやと思うから端折るけど、あの子な、『誘鬼灯』やねん。それもごっつ強力な。その辺の浮遊霊とか一発やし、吸血種なんかが来たのは予想外やったけどそこは堪忍な?さっちゃんと一緒に行動しとったって聞いとるからなーんも問題なかったんとちゃうかな。ま、これからしばらくは毎晩忙しくなるやろうから結界の楔はしっかり手入れしとくんやで」
ここ最近の仕事の多さと吸血種の出現も加味して薄々感じてはいたが原因は御影さんの『誘鬼灯』の体質なのが確定し、眉間に皺が寄る。
『誘鬼灯』は文字通り鬼を誘い、引き寄せる体質。
耳にしたことのある言葉に言い換えれば霊媒体質だが、それよりもタチが悪いのが『誘鬼灯』だ。
街の街灯が電力のある限り光るように、命ある限り輝きを失わなず、延々と悪鬼悪霊を誘い続ける。
唯一の救いは陽の光が出ている間は基本的に体質が働かないこと。
個人差があることも判明しているが、母が強力だと言い切るのは些か物騒である。
「御影さんの事は分かった。皐月さんがそっちにいるなら話は聞いていると思うけど、俺の事がバレていたんだが」
「いやーまさかあの狸爺が生きてるとは思とらんかったわ。恥を承知で言うとな、先代と一緒に結界を改良しとった魔術師なんよ。ちょっと揉め事があってウチが跡形もなく消した筈やったんやけど上手いこと逃げられとったみたいやな。ホンマ自分が情けないわー」
謎の男はまさかの七神家関係者だった。
先代、つまり祖父と懇意にしていたということは自分の存在を知っていても不思議ではない。
少なくとも母が出産するまでは家に居たことになる。




