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一夜明け、いつも通りの時間に携帯のアラームが鳴り起床する。
帰ってきたのは夜中の三時過ぎだったので五時間ほどしか寝てないが生活リズムは大事なのである。
寝室からリビングへと向かうと小気味よい包丁の音と味噌の匂いがする。
一人暮らししているマンションには侵略者が度々いるが朝食を作った者は誰一人いない。
では一体誰がいるのか。
「もう起きたの?まだ寝てて良かったのに」
台所に立つのは御影桜であった。
すでに普段着に着替えており、ワンポイントで猫の肉球が描かれているエプロン姿がなかなかにグッド。
きっと猫好きなんだろう。猫は良い文明、間違いない。
いや、そんなことは置いておいて何故この人がいるのかと考えるが寝ぼけ頭では思い当たらない。
「とりあえず顔洗ってきたら?もうすぐ準備できるから」
御影さんに促されて洗面台で顔を洗うことにする。
冷たい水が思考をクリアにし、昨日の出来事を思い出す。
ああ、そうだった。同居するんだった。
……ん?マジで?男の一人暮らしに?年頃の女性を?常識的に考えてアウトじゃね?飢えた猛獣になるつもりはないがアウトじゃね?三度目だが言わせてくれ、アウトじゃね?
「出来たわよー」
警戒心など皆無の陽気な声が届く。
とりあえず本人から色々と聞こうそうしよう。
洗面台を後にしリビングへと戻ることにした。
テーブルには簡単な和食が並んでおり、どれも湯気を立たせながら鎮座している。
卵焼きに葱の入った味噌汁、炊きたてご飯とありふれたものだが、人が作ってくれたものはどうにも美味しく見える。
ご飯に罪はない、冷める前にいただくとしよう。
手を合わせいただきますと言ってから手を付ける。
御影さんも同じように手を合わせ食べ始める。
うん、美味しい。
「朝食を作っていただけたことは感謝しますが、本当にうちに住むんですか?」
行儀が悪いかもしれないが食べながら目の前に座る人物へ疑問をぶつける。
「選択肢無いもの。どこに行っても怪奇現象が起きるし、そのせいで気味悪がった家族とは疎遠。一応メールはくれるけど安否確認だけで帰ってきたらなんて一言もなかったなあ。お祓いとか色々受けたんだけど全く効果なし。藁にもすがる思いで、蒼崎さんの事務所に訪れたらそこに貴方のお母さんがいたの。もうびっくりよ?「おったー!?確保!確保ー!!むっちゃん、事務所に鍵してー!!」って急に抱き着かれてしばらく動けなかったわ」
「何かうちの母がすみません……」
「で、トントン拍子でここのマンションに住居を移すように言われたけど、空きがないから自分の息子のところに転がり込んじゃえって言われて。年頃の男の子だけど害はないから安全だと言われていたのは初めは疑問だったのよ?貴方のお姉さんの言動がアレだったから安全だって確信しちゃったんだけどね。ホント展開が早すぎてこっちも何がなんやらって感じ。あ、でも夜に何も起きなかったのは単純に嬉しかったわ」
言いたいことを言い切ったようでずずずと味噌汁を啜る御影さん。
どうやら振り回された側で被害者だったようだ。
暗い話題も見え隠れしていたが前向きな性格なのだろう、もう気にしていないと目の前の食事を食べ進めていく。
完璧なまでの訳あり。
昨夜の件もあるしやはり詳しい話を母から聞くしかないと頭の片隅に記憶しておき、残る朝食をいただいた。
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