12
ヒャッハー!一方的な暴力の時間だー!
先手を取ったのは皐月さん。
それは一瞬だった。
一瞬で吸血種との距離を0にし、溢れんばかりの魔力を纏って身体能力を向上させた右の拳で殴りつける。
単純で原始的な攻撃。
何の迷いもなく、何の小細工もない一撃。
だからこそ最大の威力を生み、それを食らった吸血種は上半身が爆散した。
何が起こったか知ることなどできないだろう。
それほどのスピードだった。
しかしそれだけで終わる吸血種ではなく、一瞬で爆散した上半身を再生する。
再生して初めて破壊されたことに気づいた吸血種が皐月さんの顔をめがけ左手で薙ぐように反撃。
再生を見越していた皐月さんは回避をしつつ右ストレートの勢いそのまま回し蹴りを横腹に叩き込み、首から上を残し胴体がまた爆散。
攻撃はまだ続く。
振り抜いた足を後方へと着地させ、強引に体を捻り腰の入った左ストレートで更に追撃。
下半身、それもピンポイントで股間へと直撃させ三度の爆散。
思わずキュッとした。絶対受けたくない。
残った生首が重力に逆らえず落下していく。
最後は綺麗な踵落としを顔面に叩き込み決着。
再生させる暇も与えず叩き込んだ連撃は圧巻の一言だった。
「うぃー!!」
人差し指と小指を立て牛を象った某プロレスラーお決まりのポーズで満足感を表す皐月さん。
なんとも締まらないが油断は禁物だ。
「まだ終わってないですよ」
完膚なきまでに破壊され尽くしたが、吸血種はそんなものでは倒しきれない。
核となる箇所を潰さない限りは復活してくるのが厄介なところなのだ。
「え、何言ってるの?もう終わりよ。祐君、ちょっと鈍っているんじゃない?」
晴れ晴れとした表情でこちらを向く皐月さん。
いやいや、核を潰さないと再生してくるだろう。
ほら現に再生が始まって……こない。
「最初の一撃で破壊したわ。一度再生こそしたけど最後っ屁みたいなものだったし。いやーやっぱり殴り甲斐のある吸血種は楽しいわ」
楽しいところ恐縮ですが普通無理です。
「まさかこの土地で『天災』の魔術師に出会うとはの……おや?そっちは『雷神』の子供か。初めて見るがこれはこれはなかなかの逸材。なるほど、この土地の『管理者』には相応しい逸材じゃ。ちと若すぎるがの」
声の主は自分達の三歩後ろに立っていた。
気配を全くさせずそこにいた。
「「……っ!!」」
慌てて距離を取る。
一瞬気が緩んでいたとはいえここまでの距離に接近されていたのは過去に母しかいなかった。
だが問題はそこだけじゃない。
声の主は『雷神』の息子である自分の存在を知っていることだ。
表立って動かないよう厳重に注意されてきたため、知る者はごく一部しかいない。
当然ながら知る者は母から厳重に注意されている。
情報が漏れるなんてことはあり得ないはずなのに。
はずなのに知っているこの老人は一体……
「まあそう構えるでない。 先の愚か者みたく無闇に戦いたくはない。そんなこと言ったところで信じるかどうかは知らぬがな。お主の存在を知っているのだ。その内に秘めるモノもな」
淡々と事実を述べる老人はただそこに立っているだけなのにかなりの威圧感を放っている。
「何を知っている?」
「愚問じゃな。そんなこと推測だけで十分じゃわい。七神一族の特別性を知っていれば尚のこと。そんなことより気づかんのか?儂がどのような存在か」
「どういうことだ?」
「知らぬのなら構わん。『雷神』のことだ、お主には話してないだけなんじゃろう。さて、今日はここらで去るとしようか」
言いたいことを言い切った老人は興味がなくなったのか姿が闇に紛れさせ消えていった。




