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火葬を終え、追跡を開始する。
事後処理は睦月がやってくれるので問題はない。
証拠として財布は火葬準備の前に抜き取っておいたので大丈夫のはず。
……あれ? 何か忘れてる気がするがまぁいいか。
今は追うことに集中することにしよう。
既に1人犠牲者を出している。
これ以上出さないためにも急がないといけない。
それにあの人が先に遭遇してしまったらとんでもないことになる。
早くあの人と合流ないしは『アレ』と遭遇しないと。
「あら、終わったのね」
突如後ろから声がかかる。
思わずビクッと肩が上がってしまった。
ばっちり気配消して背後に立っているところがこの人らしい。
「早かったですね。もっと時間がかかるのかと思ってましたよ」
「これでもかかってるほうよ? 『アレ』の行動範囲を制限する結界張ってきたんだから。専門外のことさせるないでよ? 危うくここら一帯を消しちゃうところだったんだから」
「何やらかそうとしてんですか!?事後処理とか度返しですか!?」
「いいじゃない、それくらい。鈴花さんからやるときは徹底的に跡形も残さずやりなさいって教えられたんだもん」
「だもんで済まさいで下さい! 可愛く言ってもダメです! それに方向性間違ってます!……ったくあのバカ母は何てこと教えてやがんだ」
頭痛がして思わず頭を抑えてしまう。
何でこうも周りにはバイオレンスな人間かとち狂った人間しかいないのだろう。
さて、この物騒な女性こと、蒼崎皐月は蒼崎睦月の姉にして母の唯一の弟子である。
実家で修行を積んでいたので中学卒業までは同じ屋根の下で住んでいた。
俺も姉も親しくしていたのでもう一人の姉のような存在である。
昔は皐月姉さんと呼んでいたが今となっては恥ずかしくなり皐月さんと呼ぶようにしている。
諸事情により実家から出ることになったのでもう会うことはないと思っていたが、引っ越し先は驚いたことに皐月さんの実家があるところだった。
そのため蒼崎家とは交流が深まり、第二の故郷と呼んでいいくらいの場所となった。
それから一年後。
姉貴が何故かこっちに来て、修行を終えた皐月さんがこの街に戻ってきて、結局みんな集まるようになり、スキンシップの激しさと酒が入るような年齢になったことを除けばさして変わらない日々を過ごしている。 本当に世の中狭いものだ。
「ま、それはそれでありか」
「祐君、何か言った?」
「少し昔を思い出してました」
「珍しいね。どうしたの?」
「皐月さんは変わらないなと」
「私は私だもの。蒼崎皐月という人格は絶対変わらない。絶対揺らがないって自負してる。でも祐君はかなり変わってたからびっくりしたな。環境が変われば雰囲気も変わっていくものなの?」
「そうかもしれないですね。そこのところは自分じゃわからないですけど、皐月さんがそう言うならそうなんでじゃないですかね」
自分自身が変わったことを自覚できるなんてことはかなり難しいと思う。
人間は環境に左右されやすい生き物であるからだ。
本人も知らぬ間に環境に適応して生き残ろうとする。
気候や土地はもちろん、人間関係でも同じことが言える。
複雑になればなるほどその場に相応しい存在になり乗り切る。
我を通す者もいるだろうが、通し過ぎればそれはただのナルシストであって真っ先に攻撃され、排除される対象にしかならない。あくまで持論だが。
生きるということは絶妙なバランスで綱渡りをしているようなものだと思う。
何をしたって上手くやる者が生き残る、まさに弱肉強食。
この世の宿命だ。
なら今隣にいる人物はどうなんだろう。
変わらないことを自負することはどんな感覚なんだろうか。
凡人ではわからない境地。
非凡にしかわからない境地。
如何なるものか興味はあるがそこまでの境地にたどり着くことは自分には多分無理だ。
「どこが変わったか指摘してあげようか?」
「是非お聞きしたいです」
「近寄りやすくなった」
「はい?」
返答の内容に思わず聞き返してしまった。
「だから近寄りやすくなった」
そんな実感はない全くないのだが面と向かってはっきりと言われてはそうなんだと思ってしまう。
自分自身が実例のようなのでそう簡単には違うと言えない。
小っ恥ずかしいが素直に認めよう。
「皐月さんの言うとおり確かにそうかもしれませんね…っ!」
言い切ったと同時に3メートルほど、自分は左に、皐月さんは右に距離を取る。
瞬間、立っていた場所には紅い光弾が数発着弾してクレーターが出来上がってた。
次回戦闘回です。
描写はあまり期待しないでください_( ´ ω `_)⌒)_




