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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
【アルタネイティブ・ヴァンプ-Bloody Castle-】
149/190

chapter.07

 セイントフォームは、痛む体を無理矢理動かしながら、全身に設けられたスラスターと自分の肉体を動かし、近くへと迫っていたマリスの体へ、可能な限りのパワーを持って追突。



「ぐッ!」



 神霊としての血を分け与えられ、神霊でない者による攻撃に痛みが無いとしても、圧倒的なパワーに対して必ずしも有効というわけではない。


数メートルほど吹っ飛ばされたマリスは、胸元に埋め込まれた宝石に手をかざし、ブンと腕を振るう。


セイントフォームの周辺を襲う豪炎。


しかし、彼女は全身のスラスターを吹かしながら炎に対抗し、僅かに呼吸さえできればそれでよいと、地面を蹴って空を舞う。



「う、おぉおおっ!!」



 空中からの姿勢制御、そして先ほど距離が出来たマリスへの突撃、腹部へ拳で殴打。


その一連動作を一秒にも満たぬ短時間で行ったセイントフォームは、今一度自身に襲う痛みに耐える。


全身から噴き出す水蒸気。それは体調によっても変動する、セイントのアルターシステムが発生させる安全装置――人が人らしく戦える為の、時間制限を知らせている。



「ちく、しょう……っ! 志斎は、何時もこんなの、使ってたのかよ……っ!」


「だから、言ったでしょう? 貴方のようなお坊ちゃんに、そのアルターシステムを使いこなせないって!」



 今にも膝を折り、アルターシステムを取り外したいと言う生存本能が働きそうになるも、しかしセイントフォームは、それに抗い、幾度となく首を振る。



「いいや、絶対に、負けない――!」


「アルターシステムに抗ったって、セイントの力を使っただけじゃ、貴方は私に勝つ為の力さえないのよ!? 無駄な抵抗は」



 戯言だ。


セイントフォームは、疾く駆けたスピードを維持したままマリスの顔面を強く殴りつけ、地面へとその女体を叩き込むと、衝撃で体を跳ね返らせた彼女の腹部目掛けて右脚部の回し蹴り。


尚も痛みが無く立ち上がるマリスだが、それでいい。距離が開いていないと邪魔されるやもしれないから、距離を開けただけの事。


 いつの間にか、セブンスフォームチェンジ用のカプセルを持っていたセイントフォーム。


彼女は乱雑にそれを飲み込み、自身の虚力と全身に巡る神霊としての力を融合させ、更なる力を有す事に成功。



それにより、彼女の名はこう改める必要がある。


 アルタネイティブ・ヴァンプ・セイント・セブンスフォーム、と。



「長い名前だけどね……っ!」


「舐めるんじゃないわっ! フォルネスと違って、私たちは神霊としての血を与えられた、戦闘特化の親衛隊なの! 神霊としての力しか使ってこなかったアイツとは違うわ!」


「それはこっちのセリフだよ。――オバさんたち、自分たちだけがそうした戦闘経験があると思ってたら、大違いだっての」



 セブンスフォームとなった影響もあり、治癒能力が極限にまで高まった彼女の言動にも余裕が生まれる。


 しかしカプセルの効果時間は五分程度、しかも先ほどもセブンスフォームへとチェンジして、時間を置いたとは言え連続使用ともとれる程度しか経過していない。なるべくこれ以上は避ける為、早々に彼女を倒す為、行動を開始。


元々変身したアルターシステムがセイントの物なので、ヴァンプ特有の聖剣を生み出す力がない。


しかし、聖剣による敵の浄化効果が薄い現状、むしろ肉弾戦闘やスピードで勝るセイント・セブンスフォームの方が、有利に働く――!


突撃しようとするセイント・セブンスフォームへおびえる様に、豪炎を生み出していくマリス。


だが超スピードとセイント・セブンスフォームとしての防御力を信じ、そのまま炎の中を突っ切っていく彼女は、炎によって髪や肌を焼こうとも、腰を捻りながら強く拳を突き出し、その胸部を殴打。



「ぐ、がぁ――!!」



 神霊としての力が宿る、今のヴァンプが繰り出す攻撃を受ければ、痛みも伴う。これならば殺しきれる!



「セブンスパンチ……ッ!」


〈Seven's Punch〉



 吹き飛んでいく彼女の体へ、追い打ちをかける様にアルターシステムを右腕部にかざす。


機械音声と共に腕部スラスターが点火、姿勢制御を行いながらマリスへと接近すると、彼女はおびえる様に肩部を抉る。


段々と色を濃くしていく肌。それによって肉体はヴァンパイアとしての強度を持ち得るようになったのだろうが。



「それごと、打ち砕く、だけだ――ッ!!」



 スピード故に躱すことが出来ぬと理解したか、マリスは両腕を前面に出し、セイント・セブンスフォームの繰り出すセブンスパンチを受け止め、そのまま膝に力を籠める。


セイント・セブンスフォームのパンチと、それを受けるマリスの防御がせめぎ合いながらも、しかしそれを完全に受け切る事が出来ない。


足と接している地面が段々と摩擦によって抉れていく。最終的にマリスが膝を折るタイミングで、セイント・セブンスフォームが「フィニッシュ!」と叫び、拳は防ぐ腕ごと、彼女の顔面へと振り込まれた。



「ぐ……ぅうっ!」



観客席まで吹き飛ばされたマリス。


防御をしていた事もあり、致命傷は避けたものの、だがこのままでは敗北必須と、マリスは舌打ちと共にどこかへと立ち去っていく。


 今は追いかける力も、時間も無いとしたセイント・セブンスフォームが、アルターシステムを外し、膝を折った。

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