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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
【聖域のアルタネイティブ-卒業編-】
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変わりゆく世界-16

 近づくヴィヴィット・エンドに向けて振るわれた荘司のアッパーカット。僅かに顎を引く事でそれを避けた彼女の動きを見切っていたように、左手を地面に付けながら両足を突き付ける。


命中。放たれた二撃の蹴りを受けた彼女は姿勢を崩すようにしたが、しかし笑みを浮かべて蹴られた部位に触れながら「イタイイタイ」と呑気な声を上げる。



「……それなりに、ダメージ入ったと思うんだけどな」


「痛みはあった。が、超回復はその程度では破れんな」



 ならば、と荘司はステップを踏みながら彼女へと近づき、素早い拳を一撃、その鼻っ面に殴り、ヴィヴィット・エンドが動きを止めた瞬間を見計らって、顎に重たいフックを一撃、続けて掌底を二撃連続で打ち込んで、その身体が僅かに宙へ浮いた所に腰を捻り、最大限の力を込めた一撃を、放つ。


数十メートル程吹っ飛ばされた肉体。変身時よりも力強く、また堅牢な肉体を持ち得ようが一撃でエネミーを殺しきれるほどの威力で殴り、回復の前に絶命させてやろうとした彼の攻撃だったが――しかし、三秒ほどの時間が経過すると、彼女はのっそりと起き上がり、手を振って見せた。



「無敵かよ……っ」


「一応弱点はあるぜ? 探してみな」



 こんな事をしている場合ではないのに、そう考える荘司だったが、しかし彼女を放置する事は出来ない。


吹き飛ばした彼女の下へ駆け、振り込んだ一撃。


それも受けられるかと思いきや、しかしヴィヴィット・エンドはそれを避け、荘司の背中を強く蹴りつけて地面へ倒れさせると、サイドアーマーに備えていたサーベルを取り出し、それを振るった。


一撃、二撃と振るわれた剣は、変身していない状態で受ける事は難しい。何とか寸での所で避けつつ、だが何時までも避け切れるものでもない。


変身する為にアルターシステムを稼働させようと考えるも、しかし変身すれば火力が足らず、また変身をせずとも殺しきれない現状に悩み、つい動きを止めてしまう。


大振りで振られたサーベルの一閃を避けつつ、しかし追撃として放たれた、剣の柄を用いた一打を顔面に受け、血を吐きながら地面に倒れた荘司。


彼の姿を見据え、アルターシステムを繋げた彼女は、腕より噴出される推進剤を吹かしながら、笑いかけた。



「さようならだ菊谷荘司! 優奈はオレが、お前の代わりに愛してやるよっ!」



 地面に倒れ、ただ振り込まれる拳を待つしかなかった彼だったが。


 今の言葉を聞いて湧き出た怒りを胸に、彼女の拳が振り込まれ、腹部に叩き込まれる寸前。


 アルターシステムを掌に押し付け変身、超高速で動いた彼女――アルタネイティブ・ブルーの上空から放った踵落としが、ヴィヴィット・エンドに襲い掛かる。



「がっ――!」



 初めて、嗚咽の様な言葉を吐いた彼女。


それに一瞬思考を回した瞬間、エンドは危険と判断したかバックジャンプでブルーから距離を取り、口より吐き出して唇に残る血を、指で拭った。



「……そうか、分かった。お前、どういう基準で判断してるか分かんねぇけど、攻撃中に関しては超回復とやらが作用してねぇみたいだな?」


「チッ」



 とはいえ、厄介な事に違いはない。


エンドの有する超回復がもし自身の攻撃中に作用していなくとも、そこから別に攻撃を打ち込んだ場合、その超回復で体力や傷を全て回復してしまうのか、その傷だけは回復できないのか、それより他のトリガー等があるのか、等がわからぬ状況では、ジリ貧になりかねない。


だが、希望は見えた。諦めなければ勝機はあると考えたブルーは、ヴィヴィット・エンドからの攻撃を待つも――しかし、彼女はため息を付きながら、指をパチンと鳴らした。



「バカかお前。戦術が見破られたのなら、こちらも時間を作って手段を練るに決まってるだろう?」



 彼女の背後に作られる、移動用のゲート。



「待て!」



 叫び、追おうとするも、しかし遅かった。


既に姿を消していたヴィヴィット・エンドと、彼を連れるゲートを見据えて、ブルーは舌打ちをしながらアルターシステムを外し、変身を解除した。



「……待ってろ優奈、今すぐ助けに行く」



 ポケットからスマホを取り出し、慣れぬ操作で白兎に電話をかける。



「白兎、俺だ。そっちは大丈夫だよな?」


『監視カメラからの映像で現状は把握してる。それより荘司は大丈夫? 結構な手数貰ってたように見えたけど』


「俺ぁ頑丈だからな。それより」


『事務所、と言っていたね。とすると、エンドの経営する会社の事務所って事かな』


「こっから遠いのか?」


『いや、秋音市だよ。……それどころか、君と優奈にとっても、それなりに因縁のある場所だ』


「……ああ、秋音市で俺らに因縁って言ったら、あそこだわな」


『うん。秋音駅前、鳴海産業グループビルに事務所を構えてる。鳴海産業グループと提携を組んでいる企業を実質買収して、そこの事務所を借りてるんだろうね。えっと……NANASEコーポレーション』


「ナナセ? 確か、ヴァンプのガキが懐いてた女、ナナセって名前じゃなかったか?」


『あー、そう思って以前、七瀬七海さんに聞いてみたけど、偶然みたいだよ。そのせいでお嬢様だって勘違いされてるみたい』


「……ちなみに、アイツら今どうしてるんだ?」


『今は連絡が繋がらないね。元より協力できる時には協力しようってだけの関係だし、頼りには出来ない。僕達四六だけで何とかしないと。


 ……ただ、問題が一つ』


「時間と場所、そして人の目だろ?」

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