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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
【聖域のアルタネイティブ-卒業編-】
123/190

変わりゆく世界-15

 久野家を飛び出して、民家の屋根伝いで秋音市の空を舞うアルタネイティブ・ブルー。


それは空から、エンドやアルタネイティブ・パープル、久野優奈の姿を探そうという理由からなのだが、それはほぼ意味のなさない事だった。


何故なら――先ほど四六の戦闘員に任せたエンドが、その場所を変えぬまま、倒れている彼らに気を留める事無く、パープルと合流を果たしていた姿をすぐに確認できたからだ。


空中で姿勢制御を行い、彼らの下へ降りたブルーを、エンドがニヤリと笑いながら出迎えた。



「よう、お早い到着だ」


「荘司っ!」



 捕らえられた優奈は、パープルに腕を掴まれていて、行動が出来ずにいる。アルターシステムを取りつけていない事から、彼女が今持っていないか、それとも奪われたと考えても良いだろう。



「優奈を放せ」


「それは無理な相談だ。コイツら有象無象の様に使い道が無けりゃ、開放してやっても良かったが、コイツにはある」



 優奈の肩を抱き寄せ、今その顔も近づけたエンドに、ピクリと表情をしかめたブルー。そんな彼女の顔を見たエンドはより顔をニヤケさせ、彼女をパープルに任せたまま、今戦闘員の背中を踏みつけ、一歩前に。



「オペラ、事務所へ丁重にお連れしろ。オレの妃とする女だ、失礼の無いようにな」


「承知いたしました」


「優奈、お前の姉さんは無事だ!」



 ブルーの放つ言葉に、優奈の表情が若干だが、和らいだ気がした。しかしまだ、大本の問題が残っている。



「すぐに助ける。待ってろ」


「荘司……」



 優奈の手を引いて、今アルタネイティブ・パープルとしての変身を解除し、オペラへと戻った彼がゲートを開く。


連れて行かれる彼女を追おうにも、今まさに眼前で立ち塞がる、エンドが邪魔だ。



「どけ」


「退くと思うか?」



 彼の応答に、フゥと息を吐いたブルーは――目にも留まらぬ超高速移動で彼の顔面へ拳を叩き込む。


エンドの身体が殴り飛ばされると同時にアルターシステムを脚部にかざし〈Alter・Kick〉と機械音声が流れるより前に、強く地を蹴る。


エンドの顔面を執拗に狙った、吹き飛ぶ彼を追いかけながら放たれる連撃の拳。


一秒の間に二十三発のパンチを振るった後、地面へと身体を叩きつけて彼の動きを止めると、スラスターを吹かして空高く舞い上がり、重力と運動エネルギーによるパワーを内包したアルターキックを叩き込む。



暴風が吹き荒れる。


しっかりと攻撃が命中し、確かな手ごたえさえ感じた。



――それでも、彼はブルーの足を取り、ギョッとした彼女を乱雑に退かした上で、立ち上がり、ボロボロになった衣服を破り捨て、ジンズを残して上半身を露見させる形となる。



「痛かったが、しかし面白い。喧嘩をする事に、相手を倒す事に何ら躊躇いの無い、優奈とは正反対な男だな、お前」


「……そうか、お前の能力、知識とかいう奴じゃねぇんだな」


「正確にはそっちもあるけどな。オレの能力は【知識】と【再生】でね。条件付きだが、基本的に殺されることの無い、死ぬことの無い身体を手にする事が出来る能力だ。結果、オレ個人には戦闘能力と言うモノが皆無だ」


「それで、アレか?」



 顎で示すは、四六の戦闘員。全員死んでこそいないが、しかしぐったりと身体をうつ伏せ、何時起き上がるかも定かではない程には、痛めつけられている。



「ああ――何せコレこそが、オレの更なる真価だからな」



 ジンズのポケットより、彼は『二つ』のアルターシステムを取りだした。



「二つ?」


「お前達のお仲間、聖邦協会と聖堂教会も、二つのアルターシステムを使って変身するだろう? これは、その応用だよ」



 右手と左手の中指に装着されたアルターシステム。


その露出した宝石部分を繋ぎ合わせるように合致させ、手首を捻ると、ガチリと音を奏でた。



「変身」



 二つのアルターシステムより放たれた光に身を包んだエンド。


彼――否、今まさにアルターシステムの力を以て、女性の肉体へと変貌を遂げていく彼女の姿は、実に煌びやかと言える。


全身を、金と銀の二色によって彩った装甲、両手・両足、胸元と下腹部を覆うそれらの装甲の展開と同時に、元々首元まで伸びていた金髪をさらに伸ばし、腰ほどまでのロングヘアを、ただ降ろす。


髪の毛をサラリと、手くしで整えるようにした彼女は、変身を終了すると同時に、両腕を広げた。



「変身完了――そうだな、アリメント達に習い、アルタネイティブ・ヴィヴィット・エンドとでも、名乗るとするか」



 耳にスゥ、と通る様に綺麗な声で、エンド――否、ヴィヴィット・エンドが名乗り終えた瞬間、二者が動く。


互いに一歩、前に出た瞬間に間合いを詰める事によって、互いの右腕同士がぶつかり合う。


それだけでブルーにとってはかなりの衝撃が襲ったが、しかし彼女――ヴィヴィット・エンドにとってはそうでは無いらしい。


左手による掌底を振り込むヴィヴィット・エンド。身体を捻らせて避けたブルーによる連撃の拳は、しかし両方とも受け止められ、受け流され、姿勢を崩したブルーの腹部に、左足を軸とした右足のキックが直撃。


胃液を吐き出しながら地面を転がるブルー、ゆっくりと歩みながら近づいてくるヴィヴィット・エンドを見据え、彼女は変身を解き、菊谷荘司へと戻る。


だが、それは諦めではない。



(スピードはブルーの方が上だが、パワーで押し負ける。俺ならパワーで押し負ける事はねぇ)

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