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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
【聖域のアルタネイティブ-卒業編-】
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変わりゆく世界-10

 どういう事だ、と荘司が考えたが、しかしそれを捕捉したのは白兎である。



「つまり――四六としては知らずにいたら見逃せたのに、知っちゃったからには見逃せなくなったぞ、って意味だよ」


「てことは、オッサン」


「ああ。正直君たちのやり方に文句をつける気はさらさら無かったんだが、知ってしまったからには、色々問題な部分を指摘する他ない」


『ほほう。なるほど――例えばどこと?』


「これから君達エネミーは、人間社会と友好的な立場を築きたいのだろう? だから、我々は君達へ、人間のルールを押し付けなければいけない。


 国際社会を生きる者の立場として意見するのなら、まずは君達が人身売買をしている事に文句を言わねばならない。どの国の人種を、どの様に購入したかをハッキリさせ、その責任を問わねばなるまい。


じゃあと、仮に購入した人々を派遣社員という形で雇用していると偽装するとしよう。殺さぬように延命治療を行う点に関しては好ましいが、しかし食われた女性は意志を失う。


 そうなってしまったら『正常な判断能力の下で労働していたと言い難い』という事で、君達へ労働条件の改善・福利厚生の充実等を命じなければならない。


次に男性と女性の双方を購入して、子を産ませるという事だが、これは生命倫理の観点から市民団体等よりクレームが来る可能性もある。もし君達エネミーの事を公表するならば、こうした事実も公表する事になるしね。


――さて、まず私の拙い頭でもこの位問題点が洗い出せるけど、どうする?」



一度に放たれた言葉を聞いて、荘司はポカンと口を開けている事しか出来なかった。白兎はクスクスと笑いながらそれを聞いていたが、電話の向こう側にいるエンドも同様だった。



『――ハハハッ、やはりお前が難敵だよ秋山志木! お前は「日本と言う国が指摘し辛い問題」を「国際社会に加盟する者への警告」として挿げ替えた! だが事実だから受け入れざるを得ないというなぁ!』


「そうだろう。君が仕出かした事で、私はこれだけ言えるんだ。まぁ話を聞いている限りの君だったら、それでも反論は出来るのだろうけど、しかし私が『一筋縄ではいかん人間』であると認識してもらえるだろうか?」


『元から理解してるよ! 何だかんだ四六を落とすのに一番厄介なのはお前だとな。だから率先してそっちの戦力である優奈の戦意を削ったんだ』


「ウチの戦力を虐めてくれたみたいだね」


『アイツの青臭い正義感がキライじゃないってのは本音さ』


「さて、それで先ほどの質問は終了かい? なら私も聞きたい事があるから答えてくれると嬉しいんだが」


『まとまったか、良いぞ、話してみろ』



 同意を得たので、志木は躊躇いなくそれを聞く事が出来る。



「先ほど君へ返した内容とも繋がるが、君達がもし我々と共存するとなったら、どの様に人間社会と関わる? それとも、関わらない事にするかい?」


『どうすっかねぇ……その辺はまだ思案中だ。正直、先ほどお前がした問題提起については回避案があって、そもそも「人間社会と関わらない」という事は可能だろう』


「ほう」


『オレ達はあくまで日本と言う国と、終戦協定を結ぶだけ。オレ達は地球で、お前ら日本政府とは関わりの無い女と種馬を買う事で食糧問題を解決。


 オレ達は今後、日本政府の有する国家財産等への攻撃行動をしないという条件を以て、エネミーと日本政府による誰も知らない戦争を終結させる。――な、これで十分だろう?』


「なるほど。確かにその場合であれば、君達の人身売買を突っつく理由もそう無いな。突っついても良いのだが」


『無駄骨だろう? まぁ優奈の場合はそれでも突っかかってきそうだけど』


「場合によってはその限りじゃないけどね。――何故今の話で『世界各国への国家財産等に攻撃行動を執らない』と言わなかったか、とか」


『そこを突っつくかぁ。まぁ予想済みだったけどさ。カンタンな話、今後日本以外の国へ攻撃行動を仕掛ける可能性があるから、その多様性ある未来を捨てない様にしただけだ』


「つまり長い歴史において、日本以外の国に攻め入る可能性は捨てきれないと」


『その時に決める終戦条約次第だな! ほら、未来の事を話そうにも思案する事があり過ぎて、どんな風に人間社会と関わるかを言えねぇんだよ』



 はぐらかされている。志木はその様に感じた。


もし彼が、今後「コレ」と決めた未来を見据えていたとしても、彼はその尻尾も出さぬだろう。


そして尻尾を出さぬ理由が、単純に情報を得られる事を好ましく思っていないだけならいい。



――再び人間社会へ攻め入る事を考えているから言えぬのだとしたら、志木としては阻止しなければならない。



「なら次の質問だ」


『おう、なんでも答えてやるよ』


「君はセックス依存症か何かかな?」


『……は?』



 問われると思っていなかった事だろう、と志木はニヤリと笑みを浮かべる。


白兎も荘司も「何を言っているのだ」と言わんばかりに彼を見ているので、志木は「まぁ見ていろ」と言わんばかりに手を上げ、続ける。



「いやね、君は随分とアルターシステムを用いた女体化について興味を持っていたようだし、報告を聞く所によると優奈君へ性行為の強要をしたようじゃないか。ソレはいけない、上司としてそれは見過ごせない」


『いや……まぁそりゃ、セックスはいいと思う。メチャクチャ良い。あんな気持ちのいい生殖行為が出来ない他のエネミーは損をしていると思う。……けど、お前が何でそれを聞きたいかがわからん』

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