雨は、好きですか?【短編】
あの日、私は変わった。あのどしゃ降りの雨の日に。
雨は嫌いだ。湿気とか頭痛持ちだからとかじゃなくて、私の名前だからだ。私はいわゆるいじめられっ子だった。
「お前なんて生きてる価値ねーんだよ。」
「うざい、死ね。」
と、いつものように言われる。腹部を蹴られることもあった。時には、胸部を刃物で切られることもあった。そのせいで今は男みたいな体をしていた。
これは、ある雨の日だった。私はいつものようにいじめられていた。
「今日は雨だなぁ、きっと神様も泣いてるんだよ。お前見たいなやつが自分の涙と同じ名前でな!」
いじめっ子たちは笑った。笑いながら私を蹴った。私に罵声を浴びせた。私は痛いとすら思わなかった。もう慣れすぎていた。
でも、体は痛くなくても心は痛かった。
40分ぐらい殴られ、やっと今日が終わる。今日はいつもよりひどかった。服をとられ下着だけの状態で暴行をされた。しまいには、隠蔽といって服を着せられ、生きている罰といって金を取られた。
私は家に帰った。ラインを開く。クラスのグループに入ってはいるが、いじめっ子のせいでしゃべるといろいろ言われるのでしゃべってはいない。確認はするが。
今日はそのグループ以外から今日は通知が来てた。ある男の子からの通知だった。
「俺もいじめグループ入ったからよろしくな」
そうきていた。一人くらい増えたって一緒だから特に気にしなかった。
次の日。いつものやつと昨日の男の子が来ていた。私が連れていかれる途中、男の子は、
「今日で終わりにしてやるよ。」
と言った。まあ、いつ殺されてもいいし、やるなら早くしてほしい。
そうして、今日のいじめが始まった。でも一向に男の子はいじめてこない。結局、いつものやつらにいじめられて終わった。
その時だった。
ばきっ
校舎中にその音が響き渡った。それは、いじめっ子が男の子に殴られた音だった。
「ちょっと、何すんのよ!」
「わりい、わりい手が滑った」
「学級委員がそんなことしていいわけ?」
私は今思い出した。この子は、私たちのクラスの学級委員だ。
「学級委員以前に人間としてだめだな。」
「そうよ!だったら...」
「そうよって言ったな?」
彼が怒りに満ちた声で言う。
「お前ら、何言ってんだ。散々この子を蹴って於いて何言ってんだ。この子がどんな思いで今までいじめられてきたと思ってるんだ。こいつを、俺の雨を、なにいじめてくれてんだ。ふざけんじゃねえ。」
そう言っていじめっ子たちを殴る。
「わ、分かったわよ。私たちが悪かったから。」
それだけ言い残していじめっ子たちは去っていった。
私の顔は何かで濡れていた。それは、涙だった。
「な、んで」
彼が私の方を向く。
「ごめんごめん。見たくないもの見せちゃったかな。」
少し笑いながら可愛い笑顔で彼は言う。私は無意識に彼に抱きついていた。
「ど、どうしたの?」
彼は困惑する。しかし、そんなのも気にしないくらい私は恥ずかしいほど泣いた。
その日から、いじめはなくなった。休み時間も彼が守ってくれたおかげで楽しく過ごすことが出来た。
「雨、降ってきたね。」
「あのさ、前の俺の雨ってどういうこと?」
そう問うと彼は照れながら、
「どういう意味だと思う?」
と、聞き返してきた。私は期待した答えがもらえなかったから、
「雨は、好きですか?」
と、聞いた。
いじめは良くないですね。それを伝えたくて書きました。ここには、作者の実体験もあるので少しでも共感してくださったら光栄です。