蕾3
アレクダレンへのお礼のハンカチは、感謝の意味を込めてカンパニュラの花を刺繍した。
針を使う為の練習によくハンカチに刺繍していたカティはあっという間に仕上げてしまった。
お礼の手紙も添えて、侯爵家へと届けてもらうよう依頼したカティは仕上がった帽子を持って自身は伯爵家へと向かう。
「綺麗な帽子!やっぱりマダム・リリの所は違うわね!」
カティの作った帽子を被り、くるくると鏡の前で回る伯爵令嬢は嬉しそうに頬を赤に染める。
「大きさも大丈夫みたいですね。もし風が強ければ、ここのリボンを解いて顎の下で結べるようになっています。結び目にはこのコサージュを挿せばアクセントになりますよ。」
「あら!こうしても可愛いわ!本当に素晴らしいわ!ふふ、これなら少しでもお茶会で注目してもらえるかしら。」
カティは何て答えていいか分からず、曖昧に笑みをつくり、用意していた針や糸を箱にしまっていく。
「身分もそうだけど、わたくしでは王太子妃なんて無理だと分かっているのよ。けれど、夢は見たいわ。
なんて言ったって王太子様は素敵な方だもの。」
伯爵令嬢は被っていた帽子をそっとテーブルの上にあった箱にしまい、長い睫毛を伏せる。
「...優しく微笑んでくださった事があって.....胸がすごくどきどきしたの。けれど王太子様は皆にそうなのよ。同じようにいつも誰にでも平等に優しく微笑まれるの。......それでもわたくしは王太子様の事が....」
寂しそうに綺麗に微笑む伯爵令嬢にカティの胸が痛む。
そういう気持ちを知っている。
いや、つい最近感じた。
あぁ、あれは.......そうか私は.....
「あなたの帽子は不思議ね。萎んでしまう気持ちが元気になるわ!お茶会が楽しみ!」
カティは泣きそうになる気持ちを押し込んで、ありがとうございます、と答えた。