帽子のデザイン
「お兄様の意見も聞きたいですわ」
侯爵邸に着くとロザリアがアレクダレンを誘った。
カティは持ってきたデザイン画を二人の前に広げる。
「...すごいな。」
「まぁぁ!どれも素敵だけど....これが好きだわ!」
「ロザリア様からお話を伺ってお好きな花とお色を詰めた物ですね。....けれどロザリア様と合わせるとやはり要らない物が多い感じがしますね.....」
お茶会用の帽子の型は、日焼け防止もあるのでサイズは大きめ、花の形のコサージュを使うのが一般的である。
デザインはそれに倣って、花を大きい物でまとめたり、小さい物と混ぜたり、単色の物もあれば、色をいくつか組み合わせたり様々である。
ロザリアが選んだのは、ロザリアが好きだと言った黄色の大きめに蝶々形に結んだリボンの上に、大小組み合わせた花をあしらえた物だ。
デザインをした時は合いそうなイメージが出来たのだが、実際本人にデザイン画を翳してみると何か違う気がする。
「そうかしら?とてもいいと思うのだけど......
お兄様はどう思います?」
アレクダレンは他のデザイン画を数枚手に取り眺めていたが、目線をロザリアの持っている物へと移す。
「そうだな.....女性の好みは難しいが、ロザリアははっきりした色より透き通るくらいの色合いが似合うと思うが......」
その言葉を聞いてカティははっとした。
「もうっお兄様ってばそういう事を聞いているのでないです!」
「いえ....そうです......そうですよ!ロザリア様っ!」
突然、大きな声をあげたカティをロザリアとアレクダレンは驚いて見つめる。
「私、固定概念に囚われ過ぎていて.....
あぁ!!そんな事思いつきませんでした!
あ、帽子の素材で使われるのがこういったはっきりとした色合いの物が一般的でしてそれと言うのは......
ああ!それより描いて説明した方が早いですね!」
言うなり、手元にあったデザイン画をひっくり返してカバンからペンを取り出すと、さらさらとカティの頭がに浮かんだデザインを描いていく。
「リボンではなくソフトチュールとシフォンチュールを使います。あ、これはベールなどに使われている素材です。
ここに...こんな風に重ねて、色は...ドレスの色と合わせて黄色と青....白もいいな.......うん、白ベースで帽子の周りを巻いて、黄色と青はここで花の形にして使いましょう。」
「ベースの白の所には、パールを散りばめて...
あ、そうしたらここは螺旋にした方がいいですね。」
次々とデザイン画の裏を使い、何度も書き直していく。
その光景を唖然と二人は眺めていたが、カティの頭の中のロザリアの帽子が紙に描かれていく度に、段々とロザリアの瞳がきらきらと輝いていた。
「少し下に垂らすチュールも長めにけれど揃えず、長さは変えて、ここにもパールを散りばめたい......
うん、これがいい感じ!」
言い終えると同時に、ばっとデザイン画をロザリアに合わせる。
「完成!?」
嬉しそうなロザリアと反対にカティは眉をきつく結ぶ。
ロザリアと反対側に座っていたアレクダレンが、デザイン画を取り、カティと同じ様にロザリアに翳す。
「似合っていると思うが.....」
うーん、とカティは唸りながら席を立ち、アレクダレンの後ろにからデザイン画とロザリアを何度も見比べる。
「...........あっっっ!!!!」
いきなり後ろから聞こえた大きな声にアレクダレンは勢いよく振り返ったが、カティはまるで気にもしないで新たにデザイン画を描く。
形は一緒だが、かなり小さめのサイズ。
被るというより、乗せるに近い。
「小さくするので、チュールは少しボリュームを持たせて.....」
再度、デザイン画をロザリアに翳した。
「出来た....の?.....けれど小さくないかしら?
このような帽子見た事がないわ?」
不安そうな瞳を向けるロザリアに、カティは満面の笑みで頷く。
「はい!全く新しい物です!私としても初めての試みですが、ロザリア様ならきっとお似合いになります!」
「確かに....先程よりしっくりきている。というか、引き立つな.....どちらも。」
アレクダレンの言葉にロザリアの顔がぱぁぁと明るくなる。
「ロザリア様っ私!今すぐ製作に取り掛かります!
早く形にしたいっ!失礼させて頂いてもよろしいでしょうか?」
口では許可を求めつつも、すでに体は広げたデザイン画を集めカバンに押し込んでいる。
「ええ、ええ!もちろん!わたくしも楽しみにしています!」
ロザリアは馬車の準備をするよう執事に頼む。
ロザリアの言葉にカティはにっこりと微笑み、アレクダレンに頭を下げた。
「アレクダレン様。貴重なご意見ありがとうございました。きっと素晴らしい帽子を作ってみせます!」
そうして、カティは家には帰らず、仕事場へと向かって行った。