プロローグ
基本的にはほのぼのですが、この話も含め、いくつかはほのぼのしてない所があります。
お気を付けください。
大陸の中心に位置するミスリラ王国の、とある一室。辺りはすっかり静まった夜更けのこと。アイスブルーの瞳と白銀の髪を持つ流麗な青年と、同色の色彩を持つ冷たい印象の壮年の男性が、難しい顔をして何やら話し合っていた。
「父上、やはり断るのは難しそうです。私が一度向こうに滞在させて頂いた恩がありますし、他国とはいえ一応身分はあちらの方が高いので。下手に言い訳して、変な風に勘ぐられても面倒です」
「そうか・・・」
美青年の言葉に、壮年の男性が眉間の皺を更に深くする。よほど重大な案件なのか、深刻な顔を崩す気配はない。
「滞在中は、常に私が見張って置きましょう。何か問題が起きてはいけないからと言っておけば、さほど不自然には思われないでしょうから」
「あぁ、そうだな。私の方でも対処しておこう」
「お願いします」
厄介なことになった。こんなことなら、留学になど行かなければ良かった。
青年は後悔するがもう遅い。先方は既に此方に向かう準備を進めている。
滞在期間は約4ヶ月。何とか守り通せればよいのだが。効果があるかは分からないが、念のため演技の上手い女優と、腕のいい化粧師を手配しておこう。
青年は壮年の男性に一礼してから、静かに退室していった。