ジェットコースター・出発
『ようこそ。世界最大級のジェットコースターへ!これからこのアトラクションの説明をいたします。
まずはじめに、乗車していただきましたら、安全バーをお下げください。シートベルトも忘れずに。
シートベルトの着用が確認でき次第出発いたします。出発いたしましたら一度、黄泉の国へ向かわせていただきます。そこでは様々な誘惑がございますが、決して声を出さないようお願い申し上げます。もし声を上げてしまいますと、その時点でゲームオーバと判断いたします』
ジェットコースターに乗って少しした頃、この放送が流れた。聞いたミクは、後悔をしていた。黄泉の国がどこかはわからないが、誘惑に負けず、声を我慢できるはずがない。そして、ミクは絶叫マシーンが大の苦手なのだ。嬉々としてジェットコースターに乗ろうとする人の気持ちも、並んでまで乗りたいという人たちの気持ちもわからなかった。
「嘘でしょ・・・ジェットコースターなんて、私乗れる気がしないんだけど」
『ミク、俺、カイト。無理、なら、帰る、できる』
『ねぇ、ほんとにカイトはどうしてあそこまで入れ込んでるの?拾い食いでもした?』
『わからないわ~アタシは口出しできないし、カイトがミクちゃんの担当になってからああだから・・・』
グレイが横やりを入れるが、ミクはグレイのことを知らないので、頭に“?”を浮かべて首をかしげていた。
『グレイ、自己紹介』
『ほんとに何か食った?・・・コホン。え~初めまして。ワタシはグレイっていいます。今は誰も担当してないから、情報を集め回ってるよ~。カイトがここまで入れ込んでる人には興味があるから、仲良くしてね~』
グレイの口からでたプレイヤーという言葉の意味を考えているうちに、ジェットコースターが動き出してしまった。
『あ・・・ごめんね~間違って出発のボタン押しちゃった~』
『・・・』
『怖いね~ただ単に間違えただけじゃないか』
そんな会話が聞えて来る間にもジェットコースターはどんどん進んでいく。
『これより、皆様を黄泉の国へとご案内いたします。決して、声を出さないよう重ねてお願い申し上げます』
黄泉の国へと進みながら、ミクは考えていた。どうすれば、生きて帰れるだろうかと・・・。