6話 魔法教団
目が覚めてから2日が経過した。
ーーそろそろ退院だな…
そしたら目的の場所へと、気持ちが急ぐ。それに今の世界の状況が分からない。テレビはあるが、つけても砂嵐しか映らない。
窓からは病院の中庭が見えるだけだ。結局外の状況が分からない。
すると、遠くの方から爆発音が聞こえた。おそらく魔王と戦闘しているのだろう。だが魔法で無力化されるだろうと思った。魔王ならそれぐらい容易いだろう。
ーーさてと…看護士たちがいない間に部屋を抜け出そう。
優は退院までベットにある部屋からは出られないこととなっている。まあ、出なくても生活に必要な施設は全部あるからいいのだが…
優は静かにドアを開けた。誰もいないことを確認し、エレベーターホールに向かって走った。
エレベーターホールに着くと、ここが5階という表示があった。
優はエレベーターに乗り、1階のボタンを押した。
1階に着いた。降りるとそこは…地獄だった。
ーーウソ…だろ…
カウンターから全てがボロボロだ。柱には銃の当たった跡が残っていた。死体が転がっている。自衛隊員を始め、看護士たちが死体となって転がっていた。
するとエレベーターが開き、誰かが降りてきた。
「ここにいましたか。優くん」
たまに優の話し相手になってくれる一つか二つ年上の看護士だ。
「これはどういう状況だ…」
「魔王軍と名乗る者たちが攻撃してきた跡です。優くんが来る前のことです」
看護士は丁寧な口調で答える。優はあまりにも酷い状況のため、何も言うことができなかった。看護士は一息入れて、話を続けた。
「東京に残された唯一の人間の都市・練馬区。そしてここは、練馬区にある病院です」
「練馬区…」
優はつぶやいた。東京スカイツリーは墨田区にあり、最悪なことに浅草の目と鼻の先にある。
ここから東京スカイツリーに行くためには歩きでは遠過ぎる。普通は電車で行く。車で行こうにも車は運転できない。それに、看護士の話からは練馬区以外は魔王の手下がウロウロしているらしい。
ならどうするか。優はいい考えが浮かばなかった。
優はため息をついた。
「とりあえず、病室に戻りましょう。元気になったとはいえ、まだ入院中です」
看護士は優を病室に戻そうとする。優はそれに大人しく従いエレベーターに乗ろうとしたその時だった。警報がなった。
「魔王軍と思われる者たちが練馬区に侵入を確認。第一次戦闘態勢。繰り返します。魔王軍と…(以下略)」
「優くん、こっちです!」
優は看護士に引っ張られ、病院の外に飛び出した。そこで初めて病院の全体図を見た。
病院は1階から3階まで廃墟化しているが、4階から上はそれほど傷はついていなかった。
他の建物はほとんど崩壊している。良くても病院の1階から3階の様な感じになっている。
優は看護士に引っ張られ、防空壕の様な場所に着いた。2人が中に入ると鉄の扉がガッチリと閉められた。
中では大勢の人々がいた。子供から老人まで。
泣け叫ぶ人や悲鳴を上げる人。絶望に包まれている人がいた。
その中では優は全然冷静な方だ。
外からは爆発音。銃声。生物のうめき声が聞こえる。逃げ遅れた人々の悲鳴も聞こえた。
ーーなんかヤバそうな状況になったな。俺が外に出たのがフラグになったのか?
などと優は呑気な事を考えていた。
その時だ。鉄の扉がバンバンと叩かれる音がした。それは人間の力ではない。おそらく
「魔王軍か…」
優はつぶやいた。人々は感づいた様でさらに悲鳴が大きくなった。
ーーなんか武器になりそうな物はあるか?
優は急いで辺りを見回した。しかし武器になりそうな物はない。
その頃、看護士は何かブツブツと言っている。
「水の精霊たちよ。私に力を貸したまえ…」
それを聞いて優ははっとした。
ーーまさか…詠唱!?
そしてついに鉄の扉が破られた。その瞬間
「アル・フルーラ!」
水の激流が看護士の手の平から出て、その激流が魔王軍を襲った。
魔王軍は悲鳴をあげ、水圧と流れでグチャグチャにされた。
それを優は呆然と見ていた。
「あっ、そういえば自己紹介してませんでしたね」
看護士はそう言って優に振り返る。
「私はセツナ・フォーカス。魔法教団のシスターです」
セツナはそう言って微笑んだ。
「魔法教団…!?」
魔法教団。それは東京スカイツリーの地下に本拠地を構える魔法組織。表向きは練馬が本拠地の宗教組織だ。だから魔法教団と名乗っている。
そう、ユズが言っていた組織とは魔法教団のことだ。
6話目にしてやっと物語が始まる…
そして、やっと書きたいところが始まる…
まあ、まだ『本編』に入ってないけどね