5話 魔王の行動
時は少し遡り、爆発が起きた直後の浅草。
「ぐはっ!」
自衛隊の1人が口から血を吐き、倒れ絶命した。周りには数十人の自衛隊員の死体が転がっている。
そして、その中心に血に塗れた剣を持つ男がいた。その男は見るからに自衛隊員ではない。
「貴様!何をやっている!」
部隊長は剣を持つ男に言った。
「俺は魔王。この世界を制する者」
魔王は殺気が込めた眼差しで部隊長を睨んだ。
「魔王…ウソだろ…あの話はおとぎ話じゃなかったのかよ…」
「ほう。おとぎ話とはな。面白い。なら、おとぎ話程度でも俺の力は知っているな…」
すると部隊長は震えた。
「ま、魔法…」
「漆黒の槍よ。肉を引き裂け。デス・スピア!」
魔王は詠唱し、槍を魔法で作った。そしてその槍を部隊長をめがけ飛ばした。
槍は部隊長を貫いた。部隊長は崩れるように倒れた。
廃墟化とした浅草。すでに生き残った者はいない。全て魔王に殺されたのだから…
「さて、次はどこに行こうか…」
魔王は血に塗れた剣を鞘に収め、ゆっくりと歩き出した。
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同時刻、六本木。
「魔王様がついに目覚めたか…」
「ええ。では、我々も行動するとしましょうかね」
六本木ヒルズの中。見た目は普通の人間の男女がいた。
「我が血に従え。大地の炎よ…」
男が詠唱する。女は無言で自分の指を噛み切り、傷口から出た血で魔法陣を書き始める。
「我々を導きたまえ…」
最後の一句を詠唱したのと同時に、女は魔法陣を書き終えた。そして…
「「ルーア・ゴア!」」
2人は同時に叫んだ。すると魔法陣が光りだし、炎の柱が現れた。
炎の柱は六本木ヒルズを飲み込み、街全体を燃やしていく。
「魔王様の復活の祝いだ」
男は言った。
「綺麗な花火」
女は言った。
この日一瞬にして、六本木は炎の海になった。
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同時刻、大阪・道頓堀。
「あー…久々の人間の肉…」
女は人間を食べている。女の周りにあるのは人間の骨。もしくは死体のみだ。生きている者など1人もいない。
「魔王様…私は生きてますよ」
口についた血を拭いながら1人、つぶやいている。
「居たぞ!狂気女!」
警察の部隊が女のところへと駆けつけた。
「また、ご飯が来た!」
女は警察に襲いかかった。
肉を引き裂き、頭をかち割り、手足をもぎ、心臓をえぐり、次々と殺していく。
女は自分についた血を舐めた。
「ああ…美味しい…」
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東京、大阪を始め、このような事件は日本各地で起きた。魔王が目覚めたのと同時にだ。
そう、日本は魔王たちによって滅亡寸前となっていた。