4話 飯を食ってからだ
優は目を覚ました。知らない天井。だが、ユズが作ったあの真っ白い空間ではない。つまり戻ったのだ。
横で心拍数を測る機械の音が聞こえる。それに優は酸素マスクをつけている。
「病院か?」
部屋の灯りはなく、カーテンも閉まっている。カーテンの隙間から月が見えた。
「夜か…昼間なら泣いて俺が目を覚ましたことを喜んでくれるのにな〜。医者は奇跡だとか言うのかな。ああ、なんてタイミングが悪いんだろう」
優はそう言ってため息をついた。それより気になったのは体が完全に治っているのかだ。
体を起き上がらせてみる。痛くない。手を動かす。痛くない。
ユズの言った通りだ。傷がない。
ふと横に座っている母が目に入った。ぐっすりと眠っている。とても不安そうな顔をして…
「俺は行かないと…」
優は酸素マスクを外した。そして立ち上がろうとした。しかし、バランスを崩した。目の前が一瞬真っ白になる。立ち眩みだ。
「チッ…」
優は舌打ちをし、大人しくベットに横になった。さすがに体がダル過ぎるからだ。
「よし。明日にしよう。今日は体力を戻すことを優先にするか…」
優は1人でブツブツといいながら、酸素マスクを自分でつけた。酸素マスクをつけてないと母も医者たちも驚くと思ったからだ。
そして優は再び眠りについた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして次の日の昼。
「ふぁ〜…よく寝た」
大きな欠伸をしながら体を起こした。そして自分で酸素マスクを外した。
「腹減った…飯ないかな」
優は辺りを見回した。食べ物らしきものは一つもない。それが分かると優は舌打ちをした。
「うっざい点滴だな」
優は点滴をとろうとしたがさすがにそれはやめた。
その時だった。病室のドアがガラガラと開いた。
「優…!?」
目を覚ました優に母は驚いている。
「おはよう。お母さん。それより腹減ったんだけど…」
すると優は頭を母に叩かれた。
「痛っ!?なぜ叩かれた!?」
「優がお母さんを心配かけさせたから」
それを聞いて優は微笑んだ。
「ごめん。お母さん」
優は素直に謝った。いつもなら「うるせー」とか言って反抗する優がだ。
「ねえ、腹減ったんだけど…」
「本当にどんだけ心配したと思ったの!?」
「あの、すいません。とりあえず、その感動的な話は飯を食べてからでいい?」
「よかった。生きててよかった」
「とりあえず、俺は飯を食べたい」
全く話が噛み合わない2人だが、いつもこんな感じだ。
「あっ、そうだ。先生たちに教えなきゃ」
そう言って母は走って病室を出た。それを見ながら優はさっきから舌打ちばかりしてるなと、思いながらまた舌打ちをした。
「ああ…腹減った…餓死しそう…」
そうつぶやきながら、考え事をしていた。この世界の状況はどうなったか。魔王はどうしているか。病院を抜け出し、どうやって東京スカイツリーに行くか。
「まあ、いいや。考え事も飯を食ってからだ」