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世界は再び魔王によって滅ぼされる  作者: 桐生 深夜
一章 滅びゆく世界
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3話 あの世とこの世の狭間にて

「……っは!はぁ…はぁ…はぁ…」


優は目を覚ました。知らない真っ白い天井だ。いや、天井だけではない。今いる部屋自体が真っ白い。

優がボーッとしているそのとき、


「やあ、優。元気?」


目の前に少女がひょいっと現れた。


「うわっ!?」


優は驚き、飛び起き上がった。その時に少女の額と額が『ゴツン』と結構思いっきりぶつかり合った。


「「痛っ!」」


2人は額を抑えている。少女は優を睨みつけた。


「急に起き上がらないでよね!優!」


「ご、ごめん」


優は流れで謝った。だがすぐに我に返り、


「じゃなくて、ここはどこだよ!っていうか、お前誰だよ!っていうか、そもそもなんでお前は俺の名前を知ってるんだよ!」


警戒しながら少女に言った。魔王の手下っていう可能性だってある。

少女は肌が白く、服はカラフルなドレスだ。なにより、優より年下に見えるし、可愛い。

そんな理由で、無意識に優は警戒心が無くなっていくのが分かった。


「僕はユズ。本当はもう何度も会っているけど…あっ、『人間』になってからは初めてだね」


ユズはニッコリと笑った。だが、優は『人間になってからは』の言葉が気になった。


「ん?人間になってから?」


優はユズに尋ねた。するとユズは慌て、手を口に当て「おっと」と言い、


「今のは忘れてくれ」


「いやいや、無理でしょ!気になってしょうがないんですが!」


ユズはため息をつき、頰をかいた。冷や汗をかいている。どうしようと、悩んでいる様子だ。


「それより、優。君はここはどこだと聞いたね」


「『人間になってから』が気になり過ぎて、話の内容が頭に入ってこないのですが…」


「ここはあの世との狭間だね」


「えっ…スルー!?」


ユズは優の言葉を完全に無視して話を進めている。優が何か話そうとすると、それより大きな声でわざと重ねる。


「優がなぜ、あの世との狭間にいるのかは、流石に分かるよね」


「あっ、『人間になってから』は、もう完全無視なのね」


優はボソッとつぶやいてから、ユズの質問に頷く反応をした。


ーー最悪だ…まだ、やりたいことがあるのに…童貞だって卒業できてないし…彼女はいたけど…


ユズは優を見て笑った。優は急にどうしたんだろうと思った。


「優はまだ童貞なんだ」


ユズにそれを言われ、顔がかあっどう赤くなった。


「心を読まないでくれませんか!?」


優はため息をついた。ユズに付き合って疲れたようだ。


「そんなことより…」


「ん?童貞を卒業することより大切なことがあるの?」


「あるよ!」


優は怒っている。さすがにいじられ過ぎて苛立ってきているようだ。それをユズは察し、しょうがなそうに改めて尋ねた。


「そんなことより、何?」


優は咳払いをし


「俺は死んでるのか?生きてるのか?」


「それは安心して、僕が魔法で優を治したからね。で、もし僕が魔法で治さなきゃ、あの世かなぁ〜」


「ちょっと…怖い冗談はやめてくれません?」


優は顔を青くして言った。


「いや、冗談じゃない。僕が回復させなければ完全に死んでいたよ」


優は絶句した。ユズの目と口調で分かる。ユズは本気で言っていると…そうなると、ユズは優にとって命の恩人だ。


「感謝するよ。ユズ」


「じゃあ、その感謝を行動で表してね。それでは本題に入ろう」


「今からが本題?」


ユズは頷いた。


「率直に言う。君に魔王を倒す賢者になってもらいたい」


「えっ…」


話がいきなり飛び過ぎている。


「急に賢者になれって言われてもピンとこないだろう」


優は無理と言わんばかりの顔をしている。だがユズは気にせず話を続けた。


「もし、優が賢者にならないというなら、世界は滅亡するよ。魔王によって…」


「もしかして、あのおとぎ話って…」


「優のお母さんが言ってただろ?実話だって…」


優は思わず吹いてしまった。


「つまり、昔に賢者も賢者が使っていた魔法も実在したと?お前、中二病か!?」


「僕は中二病じゃない。さっきも言っただろ?僕は魔法で優の傷を治したって」


「俺はお前が魔法を使っているところを見ていない。俺は自分の目で見たことしか信じない」


するとユズはため息をついた。そして右手を上に掲げた。


「我が力となれ。炎の精霊たちよ」


どうやら呪文のようだ。すると炎の粒が集まりはじめ、大きな炎の玉が現れた。


「えっ…」


信じられないことが目の前で起きている。優はあまりにも驚き過ぎて、炎の玉を作り出したユズを呆然と見ていた。


「っていうことで、魔王を倒して欲しい。魔法は僕が紹介するところで教わるといい」


ユズはそう言いながら、炎の玉を消した。


「これが…魔法?」


「ああ、そうだ。これが魔法だ。魔法は、生物の中にあるエネルギー『マナ』を使って発動するんだ」


優はなるほどと頷いた。


「まあ、優の場合は人間じゃないときにもう使えたはずだけどね」


ユズはボソッとつぶやいた。そのつぶやきには優は気づかなかった。優は真っ白いこの空間を見回していたからだ。


「なあユズ。この空間も魔法でできてるのか?」


「もちろん。僕の魔法でね」


ユズは自慢するように自分の胸を右手でポンと叩いた。


「すごいな」


「そうだろう、そうだろう!優にはできないことだよ!」


すると優はムッとした。


「今のすっごくムカついた」


ユズは面白そうに笑った。


「まあ、そんなに怒るなよ」


「はいはい。で、話を戻すと、俺は魔法をどこで習えばいいんだ?」


「東京スカイツリー。そこの地下に僕の組織の基地がある」


「東京スカイツリー…分かった」


するとユズはニヤリと笑った。


「優は魔王を倒してくれる気になってくれたのか?」


だが優は首を横に振った。


「いや、それは魔法ができるようになってから考える」


それを聞いてユズは笑った。そして優をバカにしている顔で、


「魔法を習う時点で、魔王を倒すことは避けられないよ」


と言った。すると優はため息をついた。


「まあ、いいや。とりあえず俺は東京スカイツリーに行けばいいんだな」


「ああそうだ。武運を祈るぞ」


ユズはそう言って微笑んだ。


「じゃあ、俺は戻る」


優は白い光に包まれ、消えて元の世界に戻っていった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



優が戻ってから数秒後。黒い光がユズの目の前に現れた。


「貴様…どういうつもりだ…」


黒い光から低い男の声がした。ユズは面白そうに笑っている。


「どういうつもりって、あいつは闇に染まったお前の後継者だよ」


「一度世界を滅ぼしたことのある奴が?ふざけてるのか?」


「いや、ふざけてないさ。ふざけているのは君だろ?元・賢者さん」


「おちょくってるのか?ぶっ殺すぞ」


「そりゃあ無理だ。いくら君が元・賢者といっても僕は神だよ?君の力じゃあ勝てない」


ユズは殺気を黒い光に向けて言った。さっきまで笑っていた顔が殺し屋の顔になっている。それを見て黒い光は舌打ちをし、消えていった。


ーー計画通り…


ユズはニヤリと笑った。

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