2話 魔王降臨
優は神殿に引き寄せられるように歩いて行く。
ーー魔王…
ドクン。と頭が波を打った。
ーー痛っ…くねぇ?
『魔王様!奴がそこまで迫って来ています!』
『問題ない。俺、自ら相手をしてやる』
優は頭を押さえた。
ーー記憶?誰のだ…
『お言葉ですが、魔王様の力はすでに弱まっています!』
『確かにな…今の俺じゃあ勝てない。だが、お前らが戦っても同じ。だから俺は、お前らを守るために戦わなきゃならない!』
『魔王様!行ってはなりません!我々のことなど構わず、お逃げください!』
『おい。お前、俺を誰だと思ってる?俺は…』
「魔王だぞ!」
優は叫んだ。完全に無意識だ。それに、呼吸が乱れてしまっている。
ーー 一体…今のはなんだ…
その時だった。神殿から黒色の蒸気のようなものが出てきた。それに続き地響きが起きた。
そして…神殿が爆発した。
優は爆風で吹き飛ばされた。
「やっと、出られた」
低い声だ。その声は神殿のような残骸の方から聞こえた。
優はすぐに立ち上がり、神殿のような残骸の方を見た。神殿のような残骸があった場所に大男が立っている。
ーーまさか…
「日の光が当たって、封印が弱くなったおかげだがな」
ーーウソ…だろ…
「世界よ。『魔王』が目覚めたぞ。さあ、絶望の時間だ」
魔王は首を回した。
ーーあれはマジで神殿だったのかよ…
優は絶句した。
「さて、手始めにそこの人間でも殺そうかな?」
魔王はニヤリと笑い、優を見た。優は危機を感じ、神殿から離れるため走った。
ーーここにいたらマズい!
ケガの痛みなど元々なかったかのように全力で走った。
「おいおい。いきなり逃げるのはダサいぞ」
魔王は手のひらを優に向けた。
「漆黒の槍よ。肉を引き裂け。デス・スピア!」
魔王は手のひらから黒色の槍が出て、優をめがけ発射された。
優はそれを回避しようとした。しかし、槍のスピードが早すぎて回避できない。
「ぐわっ!」
優は腹を貫かれた。血を吐き、腹には風穴が開いた。
「死…ぬ…」
力が抜けるのが分かる。気が遠くなるのが分かる。感覚が消えていくのが分かる。
「人間は魔法の使い方すら忘れたのか?どんだけ平和ボケしてるんだよ。防御魔法の一つも覚えていないとはな」
魔王はそう言って、優を見て鼻で笑った。
「雷鳴よ。我を運べ。ライトニング・ドライブ!」
すると黒色の雷が魔王めがけ落ちた。それと同時に魔王は姿を消した。
優は、もう意識はなかった。