二話
ああ、生きてるって素晴らしい!
手に枷をつけられ不自由だろうと、足首に重い鉄球が鎖で繋がれ身動きが取れなかろうと、首に無骨な鉄の輪をかけられてちょっと苦しかろうと、鉄格子で塞がれた土が剥き出しの薄暗い部屋に閉じ込められて出られそうになかろうと、生きてるだけで素晴らしい!
……はぁ。
確かに、先ほど見た大量のばらばら焼死体に比べれば、生きてるだけでも素晴らしいと思わざるを得ない。
一体全体この状況は何なんだろう。
頭を棒で殴られて、気がついたらこの状態だし、訳がわからない。
周りには同じような状態の人が何人かいる。
一応話しかけてはみたが、言葉は通じなかった。
見た目からして日本人では無いし期待はしていなかったけど。
それにしても、周りは美女ばかりだ。
ちょっと薄汚れているし、素朴な感じはするが、間違いなく美人の女性ばかりが同じ牢に捕らえられている。
私の居る牢屋の正面にも何人かの女性が入れられているが、言っちゃ悪いがあちらは数段レベルが落ちる。
見た目で分けられているなら私は美人と判断されたのかな。
鉄格子の中じゃなければ嬉しいけど、こんな状態じゃ喜べる筈がない。
「xxxx! xxxx!」
突然大きな声が聞こえ、牢屋内がざわつく。
その声を聞いて、頭がずきりと痛む。
間違いなく、私を殴った男の声だ。
周りの女性たちは、牢屋の奥へと後ずさり、ガタガタと震えている。
中には泣き出したり、何かに祈っている人もいる。
叫びそうになって口を抑えている人も居るから、恐らく静かにしろとでも言ったのかも知れない。
「xxxxx!」
最初に大声を出した男とは別の男が私の居る牢を開け、扉の近くで泣いている女性を引きずり出す。
足首に繋がれた鉄球のせいでかなり歩きづらそうだ。
女性は、無理やり引っ張られながら男たちがやってきた方へと連れて行かれた。
いったい、何をされるのだろうか。
牢は開けたままだったが、私を殴った男が、棒を持って牢の前で見張っている。
重りもあるし、逃げるのは無理だろう。
数分ほどして、男が戻ってくる。
連れて行った女性も一緒だ。
見たところ、怪我もなさそうだ。
先ほどよりも激しく泣いている女性は、私の居る牢とは別の牢に押し込められた。
その後、同じように一人ずつ連れられて行き、みんな数分ほどで戻ってきた。
だが、何故か二つの牢に分けて入れられている。
最初の人と、何人目かの人だけ別の牢だ。
そしてとうとう、私の居る牢は最後の一人になった。
つまり、私の番だ。
「xxx!」
男が私の腕を引っ張る。
無理やりにも程がある。痛みで顔を顰めるが、声は上げない。
私の前に連れて行かれた人たちは、誰も声を上げなかった。恐らく、それに倣ったほうがいい。
連れて行かれた場所は、先ほどの牢と大して変りは無い。
鉄格子が無いだけで、土が剥き出しの狭い部屋だった。
ランプのようなものが壁に掛けられているので、牢よりかはかなり明るくなっている。
その部屋には、妙齢の女性と、髭を蓄えた男が居た。
「xxxx」
女性が私に向かって何かを言う。
しかし、その意味は私にはわからない。
私が固まったまま動かないのを見ると、髭の男と私を連れてきた男に何か話す。
二人は頷くと、私をいきなり地面に仰向けに押し倒した。
「痛い!」
思わず声が出る。
慌てて口を抑えようとしたが、私の腕はすでに頭の上に投げ出された状態で、男に抑えつけられていた。
「離して! 痛い!」
髭の男は両手で私の脚を掴み、あろうことかそれぞれの方向へ両腕を伸ばした。
それは、つまり、私の大事な場所が……。
「ちょっと、やめて! 離して!」
私は精一杯の力を込めて暴れた。
しかし、腕も、脚も、びくともしない。
私の股間に、妙齢の女性が顔を近づける。
「ひっ?!」
痛い。
まだ、誰にも見られたことの無い場所が、女性の指で無理やり開かれている。
私は暴れ続けているが、拘束からは逃れられない。
「xxxx。xxxxxxx」
女性は何か言うと、指を離した。
男たちはその言葉を聞いて、私を抑えつけていた力を緩める。
慌てて体を起こし、服の裾を抑える。
今更ではあるが、そのままの体勢でいるわけにもいかない。
私を連れてきた方の男が、座ったまま肩で息をしていた私の腕を掴み、無理やり立たせた。
どうやら、先ほどの場所へ戻るらしい。
腕を掴んだままぐいぐいと引っ張られ、足首の鎖が食い込み、痛みが走る。
痛いが、これは我慢できた。
先ほどの、体の内側を触られる痛みよりかは、幾分マシだった。
私が入れられたのは、最初の泣いていた人と同じ牢だった。
私の居た牢が終わった後は、その正面の牢の女性の番のようだ。
先ほどまでのように、一人ずつ連れられていく。
だが、先ほどまでと違い、戻って来たのは半分ほどの人数だけだった。
正面の牢の順番が終わった頃、私はやっと落ち着く事が出来ていた。
先程まで、ずっと心臓がバクバクと暴れ続けていた。
落ち着いてやっとわかったが、これは、選別だ。
経験があるかどうかを、確認していたんだ。
首輪に手枷、足枷。
見た目で分け、処女を分ける。
牢に捕らわれた女性たちの価値を、調べていたんだ。
この状況は、まずい。
私はきっと、商品だ。
次回更新時期は未定です。