魚肉ソーセージ
ある日の夜。
スタインさんが来店していた。
トムさんではなく、別の人を伴って。
「よぉ、邪魔するぜ」
「あぁ、いらっしゃいスタインさん。こちらの方は・・・?」
「ん?ああ、この人はカミーユさんで騎士団の副長をしている方だ。カミーユさん、この者が前に話した変わった酒屋の店主です」
と、一緒にいる人―カミーユさん―に説明していた。
「うむ。店主、スタインから聞いたのだが『魚肉そーせーじ』なるモノを扱っていると言うが、誠か?」
魚肉ソーセージぃ?
むむっとスタインさんを見てみると、素知らぬ顔で明後日の方向を向いている。
・・・・・・なるほど。
「はい、扱っております。種類がいくつか有りまして、それぞれ味が違います」
いわゆる『普通の』やつから胡椒が効いたスパイシーなやつ、唐辛子が練り込んであるホットなやつとか多種多様だ。
ちなみに俺は唐辛子系は苦手なのでそれ以外なら大体イケる。
そう言うと商品棚から1種類ずつ魚肉ソーセージを持ってくる。
うちで今あるのはこの3つと『Bigあらびきソーセージ』の計4種類。
封を開け、食べられる状態にする。
カミーユさんにそれぞれ手渡すと当然のように食べた。
「むッ、これは美味いッ!」
1本をあっという間に食べ、また次のを食べまた唸る。
結局全部食べ終わるのを待つことになった。
食べ終わり、満足そうな顔をしているカミーユさん。
「店主よ、この『魚肉そーせーじ』を出来るだけ所望したい。いかほど用意できるか?」
お、大人買いっすかぁ?
いや、売り上げに繋がるしこれで満足してもらえるならこっちも有り難いし・・・・。まず在庫か。
「少々お待ち下さい。在庫の確認をしてきます」
「うむ、出来るだけ早く頼むぞ」
在庫を置いておく場所なんてそんなに有るわけがない。
酒は全部冷蔵庫に収まる程度+裏に1つ。
乾物なら検品後にモノが判るように『積む』し。
実際に現時点での在庫は1箱のみだった。
「お待たせいたしました。今ある在庫はこれだけです」
商品が入った段ボールを抱えながら報告する。
「ふむ・・・いくつ入っているのだ?」
予想より少なかったのか若干不機嫌そうな顔をした。
「えーと・・・・・・・・・・54個ですね」
「・・・分かった。ひとまずこちらを頂く。幾らだ?」
「はい、有難うございます。銀貨6枚頂きます」
「ほぅ、思ったより安いな」
「こちらの世界では大量生産出来るので、この金額でも大丈夫なんです」
「それであれば定期的に買いに来させよう。またこれが入荷するのは何時ごろか?」
うぉッ!大量注文キターーーーー!やっべぇぞコレやっべぇぞ。
「・・・・・・次回入荷は3日後ですね」
「ではそれ以降に誰か使いを寄越す」
「畏まりました」
スタインさんが魚肉ソーセージたっぷりの段ボールを抱えている。
「今日はありがとな」
「あーいえいえ。こちらとしても新規に顧客が増えたので有り難いです」
「そっか、そりゃ紹介し甲斐があったか」
「ええ。そーいう事です」
「あぁそうだ。これ今回はサービス・・・・おまけで差し上げます」
そう言いながら商品棚から魚肉ソーセージを全部取ってレジ袋に入れスタインさんに手渡す。
「いいのか?」
「ええ。いつも利用してもらってますからね。たまにはオマケの1つや2つしないと来なくなっては困りますし」
ウィンクしながら言うと、納得した顔をしていた。
「スタイン、帰るぞ。店主よ、邪魔したな」
「じゃあ、またな」
「有難うございます。またお待ちしています」
魚肉ソーセージの種類増やすかなぁ・・・。
カミーユは男です。念のため