未知との遭遇1
予想はしていたものの、アッサリと『それ』はやって来た。
「ケン坊よぉ、『来た』ぜ」
親父さんがリビングで晩飯を食べている俺にそう声をかけてきた。
「あーはいはい。どんなのでした?」
「革鎧着た男とぬいぐるみ」
わぉ。同時に来よった。
金庫に入れて置いた手提げ金庫を持って店に行く。
「お待たせしました・・・トムさん?」
ハチミツの目の前で目をキラキラさせた状態でガン見している駄目クマ風と今回で3回目になるスタインさん。
「よぉ。また来たぜ」
「いやー毎度ありがとうございます。魚肉ソーセージどうでした?」
前回薦めたブツの感想は聞いておかないと次回の参考にならん。
「あぁ、アレはすぐに無くなったよ」
「ほぅ、そんなに反応良かったんですか?」
「おお、次の日には俺のハラの中さッ」
ウィンクと共にそんな事を言ってきた。
まぁ、美味いなら仕方ないだろうなぁ。予想できたけど。
「トムさんはずいぶん来るの早かったですねー。もうハチミツ無くなりました?」
「・・・・・・・・・いや、その、あの・・・」
なんだか歯切れが悪い。後ろめたい事でもあるのだろうか?
「それは俺が言おう」
代わりにスタインさんが言い始めた。
「・・・・・・・・・というワケだ」
なるほど、さっぱり意味不明だ。いや、解るけどさ。
簡単に言うと『かっぱえびせん状態に陥った』という事だな。
で、気付くと無くなっていたと。
そのトムさんは恥ずかしいのか顔が赤くなっている。かーわいいー。
「大丈夫ですよトムさん。そんな程度で落ち込まないで下さいよ。スタインさんの方がタチ悪いですからねぇ」
「ちょ、ちょっと待て!俺を引き合いに出すなッ」
なんだか漫才のようなやり取りが続く。
「ケン坊よぉ、俺の事忘れちゃいないかい?」
「!」
すっかり忘れてたよ。今夜から親父さんも居るって事を。
「・・・・・・いやーそんなワケないっすよー」
ちょっとカタコト気味だったのは内緒だ。
「そうかぁ?ならいいけどさ。それよか紹介してくれんか?」
話を聞いていてウズウズしているんだろうな、この様子だと。
「りょーかいっす。えーっと、こっちの革鎧着ている人はスタインさんでぬいぐるみの様なクマがトムさんです」
極めて分りやすく伝える為にぱっと見での説明になった。
「なんか他にもっとなかったんかぁ?」何故かジト目で見られた。
「いやーシンプルイズベストっす」
「やたらシンプル過ぎる気もするけど、まーいいか。俺がスタイン、観ての通り冒険者やってるぜ」
「クマのトムです。スタインさんと同じく冒険者やってます」
「おぉ、俺は古物商って・・・・・・分るか?」
二人とも首を横に振る。
「むぅ・・・古いモノや値打ちがありそうなモノ、刀剣や鎧も扱っているぞ」
鎧の部分で反応していた。
「あー、鎧って言っても古いから実用性は無いだろうし、その剣見せてみな」
スタインさんが腰に吊るしてある剣を抜く。
「ふむふむ・・・・刃が厚めだから『斬る』よりは『押し斬る』様な扱いだろうから・・・・・・ウチのではムリだ」
バンザイとまさに『お手上げ』な状態で親父さんが言う。
「それにな、刀では耐久性に問題がある」
あー、手入れとかそういった事か。
刃こぼれしやすいんだっけか?厚みもそんなにないから歪んでも大変だし。
「ふむ、ウチの方では残念ながら力にはなれそうにないなぁ」
残念そうに言う親父さん。心なしかスタインさんとトムさんも同じような顔をしている。
「だから後は飲む事しか出来んのぉ」
あッこの爺ぃ最初から飲む事しか考えてなかったんだろ?
ジト目で親父さんを見るがさらりと躱された。
「とりあえず景虎の梅酒持って来い」
ちょっとソレ限定品だってばッ。
泣きながら梅酒を冷蔵庫から取り出す。定価で売りつけてやる。
「二人とも、どうぞ靴を脱いで上がってくださいな」
つまみを適当に選びながら声をかけた。
今夜は帰さないぜべいびー。根掘り葉掘り聞いてやる。
親父さんの名前って決めておいた方が良いですかね?
案があればお願いします。