サンタ?トナカイ?パンダ?
ちょっと早いですが、メリークリスマス\(^-^)/
「いらっしゃいませ~、クリスマスケーキ店頭販売ございます~どうぞご利用くださいませ~」
店内ではなく、店の外で呼び掛けている。
しかも『トナカイ』の格好をして、だ。
更には体の前後にサンドイッチ状態で看板を、とどめに手にはプラカードで『クリスマスケーキ有ります』と表示されていて、もはやチンドン屋な見た目であった。
チンドン屋なら三人程度はいるはずだが、こちらは1人。
アカネはミニスカサンタで店番中だ。
こんな寒い中であの格好させたままだと間違いなく風邪ひくだろうしな。
笑われるとしても、俺だけで十分だ。
個人店でよくケーキだなんて、と思われるかも知れないが、そこは商店街の付き合いの賜物よ。
ケーキ屋とのコネが多少はあるからねぇ。
意外とバカに出来ないコネ。
新年会、花見、歓送迎会、納涼会etc……。
年に何度飲み会があるんだ?って程だが、こちらも売上になるし顔繋ぎにもなるので一石二鳥だ。
俺が二日酔いでダウンしていてもアカネに任せる事も増えてきているので、最近は特には問題ない。
あれ?俺の存在価値って………。
いや、『あっち側』との繋がりだけでも……ってなに必死になってんだ俺?(笑)
いつもの事だから、またあいつらが『クリスマスって何だ?旨いのか?』とか『ケーキよりハチミツないの?』とか『ケーキはチョコだよね?』とか好き勝手な事言うんだろうなぁ。
いや、別に良いけどさ。
むしろ最近は奴等のそういうのが無いとつまらないって思う様になってきてるし。
うん、やっぱり重症だわ俺。
傷は深いぞぐったりしろ。いや違うか。
あいつら気紛れだからなぁ。
来るのかどうかすら判らん。
基本的にあのドアは向こうからしか開けられないみたいだし。
何もならん事を考えても仕方ない。
とりあえず、今はケーキを売る事を考えよ………あれ、ここどこだ?
考え事しながら歩いてたら、知らんとこに来てしまったようだ。
え~と、現在地……スマホはどこだ?
あれ?邪魔になるから最初から持って来なかったわ………。
やっちまったぁ……。
どーしよ。この歳で迷子かよ俺。
あっちをウロウロ、こっちをウロウロ。
結局、見知った場所にはたどり着けず。
何となく、来たと思われる方向へトボトボと歩くと背後からヘッドライトで照らされた。
そこには白黒パンダ……ではなくパトカーが。
「失礼ですが、ここで何を?」
「…あぁ。私、店の外で呼び掛けしていたのですが、考え事しながら歩いていたせいか迷いまして、生憎とスマホも持たずだったので連絡すら取れませんでした」
サンドイッチ状態の看板に書かれた『マイショップたかはし』を指差す。
「送りますので乗って下さい」
「ありがとうございます」
「通報があった時は耳を疑いました。二本足で歩いているトナカイがいる、という内容でしたので」と苦笑気味な警官。
「……でしょうね、実際はチンドン屋もどきな呼び掛けですからね~。で、ちなみにここどの辺りですか?」
「お店からですと…大体5キロ程度は離れてますかね」
「あ~それだと余り判らないわけだ。しかし、まぁ、この状況もなかなかにシュールですよね。トナカイが捕獲されてパトカーで運ばれている様に見える訳ですから」
「………プッ」
「ホントご迷惑おかけします」
「…いえ、迷った方を送るのも我々の職務ですので」
「酔っ払いを大トラと呼ぶ事があって警察署へ運ぶ事はあると思いますが、こんなトナカイを運ぶ事は……流石に無いですよねぇ?」
「「…ブフッ」」
「……トナカイは流石に無い…で…す…ね」
笑うのを堪えながら話しているので、息も絶え絶えだ。
そんなこんなで店の前に到着した。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
「では、お気をつけて」
敬礼してパトカーを乗り込む。
返礼として敬礼し返すとまた「「ブフッ」」っと聞こえた。
まぁ、トナカイが真面目な顔で敬礼(*`・ω・)ゞしたらそうなるか。
当然の事ながら親やアカネにしこたま怒られた。
何故か送ってくれた警官やその同僚達がたまに買い物に来てくれる様になった。
アカネは俺の嫁さんだぞ。やらんからな。




