表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】魔女軍師シズク  作者: 入月英一@書籍化
摂政編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/88

6-14

 人払いした、私の執務室。

 その室内に設置された執務机の上には、何枚もの羊皮紙が置かれている。


 私は、一枚、一枚、しっかりと目を通していく。

 その羊皮紙には、一枚に付き、一個人の詳細な情報が記されていた。


 日本人が見たら、履歴書みたいだ。という、感想を抱くかもしれない。


 だがそれは、履歴書というよりも、指名手配書、いやいや、粛清リストの方が、実態に近いかもしれない。



 さーて、犯人は誰にしようかな。神様の言う通り。なんてね。


 カールに下らないことを吹き込んだ下手人を見つけ出す。

 そんなことを思っていた時期もありました。


 でも、やめ、やめ。

 探偵の真似事なんて、面倒だ。

 そう簡単に尻尾を掴まえられる保証もなし。

 仮に、上手くいっても、調査に時間がかかり過ぎる。


 ならば、冴えたやり方は一つ。

 疑わしきは罰せず。そんな、お上品なことはしない。

 そう、疑わしきは、即粛清なのだ。


 おそロシアならぬ、ソ連の、アカのやり方をお手本に。


 取り敢えず、私に敵対的な奴、私をよく思ってなさそうな奴。

 全員纏めて一掃だ。

 どうせ、私にとって、目障りな存在だもの。

 冤罪だったとしても、何の問題もない。


 と、いうことで、処罰? 失脚? あるいは、閑職送り?

 どれでもいいけど、その為の材料を集めないとね。


 まずは、徹底的な情報収集。

 脇の甘い奴、つまり不正に手を染めている奴は、これだけでお終いだ。

 その事実を明るみにし、処罰すればいい。


 逆に、その辺抜け目ない連中。あるいは、清廉な連中。

 こいつらは罠にかける。

 処罰に値する罪の捏造、失脚に値するスキャンダルの捏造。

 そんなところかしら?



 噂を流すのもいいかもね。

 ○○卿は、普段紳士然としている癖に、実は色情魔。

 市井の娘をかどわかしては、乱暴を働く。

 そして、貴族の権威と、金の力で、無理やり黙らせているとか。


 うん、悪くない。

 そうね、正義感が強く、私を目の敵にしている法務局のクラッセン卿、彼には色情魔の噂を、実しやかに流しておこう。

 信憑性が出る様に、自称被害者を雇っておくか。


 くくく、白い目で見られるがいいぜ。

 そして、周囲の信用がガタ落ちしたクラッセン卿に、私が促すのだ。

 職を辞してはどうかね、と。



 税務局のレヴィン卿、彼は農村から徴税した小麦、その横流しの冤罪だ。

 それを示す証拠の捏造が急務ね。

 王都の大商会、エーレンベルク商会に協力を仰ぎましょう。


 あそことは、今まで、良い関係を築けているしね。

 それに、エーレンベルク商会は、最近台頭してきたブレーメ商会に脅威を覚えている筈。

 このブレーメ商会と、レヴィン卿が結託していることにしましょう。


 まず、エーレンベルク商会が、ブレーメ商会を告発する。

 私は、その後に、レヴィン卿が横流しに関わった証拠、勿論捏造した証拠だ、これを見事発見するわけ。

 そして、レヴィン卿と、ブレーメ商会の悪事を罰する。


 気分は水戸黄門。

 越後屋、お前も悪よの、そんな台詞を吐く悪代官役が、レヴィン卿だ。



 後は、首都近衛軍のトスパン少将。

 あの野郎、私がカールの警護関係に口出しするのに、良い顔しないのよね。

 自らの職分が不当に侵害されている。

 どうせ、そんな風に思っているのだろう。


 奴は、反社会組織との交際疑惑だ。

 こっちまで出張っている闇商人、ワイズ商会の支部を動かそう。

 誰ぞ、適当な構成員に、トスパン少将に近づけさせる。

 奴が拒もうが関係ない。

 二人顔を合わせている現場を無理矢理でも作り、そこを押える。


 ふむ。ここ王都にある支部と、ラティオ共和国にある本部。

 この両方に、協力を要請する手紙を出そう。


 久々に、ワトソン君にも、私の為に働いてもらいましょうか。



 残るは……レグーラ大将。

 大本命と言っていい、一番排除すべき人間。だが……。


 相手は、七将家の当主。

 下手に手を出せば、火傷を負いかねない。面倒ね。


 七将家の権威はかなりのもの。

 下手なスキャンダルでは、失脚することもない。


 あからさまに、私が動くのも不味い。


 七将家と、その影響下にある家臣団が、まとめて敵に回る。

 これは、いただけない。


 ならば……。

 七将家の人間は、七将家の人間に始末させる。


 とはいえ、レグーラ家だけでも手一杯なのに、他の七将家まで謀略に巻き込むのは、上策とは言えない。

 だったら、同じレグーラ家の人間を動かす。内紛の芽を萌芽させるのだ。


 幸い、丁度良い人間がいる。


 それは、レグーラ大将の腹違いの弟、エメリヒ・レグーラ准将だ。

 ひょろっとした兄と違い、がっちりと体格の良い、軍人然とした弟。

 性格も、あの粘着的な兄と違い、軍人らしい闊達な人柄とか。


 その為、当主である兄よりも、家中の、そして第六軍内の人気も高い。

 が、弟という理由で、兄に一歩譲らねばならない。


 何でもない風を装っているらしいが、内心面白くないだろう。

 そして、レグーラ准将の実母。先代レグーラ大将の後妻である、アデーレ夫人。彼女は、あからさまに、面白くない感情を隠しもしていないそうな。



 くくく、利用できる。お誂え向きじゃないか。


 この母息子を嗾ける。レグーラ家当主の座を奪わせるのだ。

 二人も、摂政である私が後ろ盾となれば、さぞかし心強かろう。



 ふむ、レグーラ大将もこれで良し!

 主だった連中は、そんなところ。


 それ以外の小者は……ハッ、如何様にも調理してやる。

 適当に冤罪被せて、悉く処罰してやる。



 よーし、作戦タイム終了!


 さあ、めくるめく、雫ちゃんのハイパー謀略タイムが、はっじまるよー!



 後の歴史家が語るかもしれない。その日、歴史が動いたと。

 陰惨たる粛清劇の始まりだと。


 ふふーん、悪辣政治家と呼びたければ、呼ぶがいい。

 私が死んだ後の名声なんぞ、どうでもいいわ。だから……。


 だから、この王都を、私の色で真っ赤に染め上げてやろう。



 私は、手に持つ羊皮紙を数枚、宙に放り投げる。


 ひらひらと、羊皮紙は揺れる様に舞いながら、やがて床の上へと落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ