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犠牲の恋
君は泣かなかった。
僕も泣かなかった。
君はもうすぐいなくなってしまうらしい。
「特効薬があるかもしれないって!」
だから大丈夫だと君は言うけど、
副作用のことは聞いてないんだね。
『一粒使うごとに1つ、あなたのことを忘れていきます。』
その言葉に君の両親も、友達も、そっぽを向いてしまったことも。
君は聞いていないんだ。
「こんないい友達を持ってわたしは幸せだよ!」
僕が君にこんなにも恋をしていることも。
『その特効薬だけど、今週中には用意できるみたいだよ。』
これは嘘。とっくに用意はできている。
『ご両親に感謝しなくちゃね。』
これも嘘。奴らは君を見捨てたんだ。
『君のためなら、僕はなんだってしよう。』
最後のホントを心の中に仕舞い込んで、僕は病室を出る。
君の知らない、僕の恋のために。